現代に転移したのでやっぱり裏社会から支配する

Jaja

第1章 転移

 プロローグ


 「日本って治安が良い方だと思ってたんだけど、やっぱり居るところには居るよなぁ」


 「日本ではこういう組織は法律でガチガチに固められてるって、ボスは言ってなかったかしら?」


 「半グレは対象外なんだよ。知らんけど」


 「お、お前達は一体…。こんな事をしてタダで済むと思ってるのか…? バックにいる組織が黙ってねぇぞ…! げぴっ!」


 「ボス。始末し終わりました」


 「ご苦労様ー」


 都内繁華街のとあるビル。

 俺とカタリーナ、そしてアンジーは、とある半グレ組織を虐殺していた。


 「刀を持ち歩けないのが不便ねぇ」


 「目立つからな。ローザも大剣を持ち歩けないから連れて来てないし」


 「無くても問題ないけど…。落ち着かないわ…」


 「精霊が全然居ないのも違和感がありますね。居ない事はないですが…。魔法を使うのに多少影響がありそうです」


 「俺は地球に少なからず魔力があった事が驚きだけどな」


 虐殺した死体を放置し、部屋を物色しながら喋る俺達。特に目的があってここに来た訳じゃないけど、ついでだしね。


 「クスリに拳銃に…。日本ではこういうのも取り締まりが厳しいはずなんだけどな。あるところにはあるもんだねぇ。拳銃なんて、本物は生で初めてみたぜ」


 「………昔、エリザベスにお願いして作ってもらってませんでした? 裏社会の人間には必要不可欠だーって、仕事をサボって開発に熱中してましたよね」


 「あったわねぇ…。確か、魔力を込めたら、自分の属性の弾が撃てる魔道具だったかしら? 最初は嬉々として使ってたのに、最終的に魔道具を経由するより、魔法を使った方が早いって、飽きて放置してるわよね」


 「男の子だもん。ロマンを追求して何が悪い」


 「子って年齢でもないでしょうに」


 「少なくともお前らよりは歳下--ひえっ!」


 拳銃を見つけてキャッキャしながら話してたら、どうやらアンジーの地雷を踏んでしまったらしい。俺じゃなきゃ見逃しちゃう恐ろしく早い手刀が飛んできた。間一髪だぜ。


 今更年齢なんて気にしても仕方ないだろ。

 俺達が何年生きてると思ってるんだ。


 「この拳銃おもちゃはエリザベスのお土産にしよう。クスリも生産部の奴らに解析してもらう為に回収と」


 俺はそこらに落ちてたカバンに拳銃やら、クスリやら、札束やらを放り込む。


 「ボス。この辺も回収しましょう」


 「あ、そうだな。エリザベス達生産部にとっては、この辺のもの全部が宝の山か。あ、待てよ。GPSとかあるんじゃなかったっけ? 島が探知されるとは思わんが…。電源が入ってなかったら大丈夫か? 覚えてねぇや」


 カタリーナが半グレ連中を漁って回収したスマホやら、タブレット。それに机の上置いてあったパソコン等の電子機器その他諸々。


 とにかく異世界では物珍しいものをどんどん回収していく。あ、これは面白そうだし、残しとこっと。


 「これ、うちに似たようなものがありますよね?」


 「うん。俺とエリザベスや生産部達の魂の力作だ」


 カタリーナが指差しているのはパソコン。

 作るのに滅茶苦茶時間が掛かったなぁ…。

 本当に…本当に…。


 組織が大きくなっていくのに比例して増えていった書類仕事。ひたすら書類仕事をするのが、俺の目指してた裏社会のボスじゃねぇと、本腰を入れて開発したのがパソコン擬きだ。


 これが完成してからの、仕事の捗り具合ったらもうね…。あの日ばっかりは、普段あまり感情を見せないカタリーナと涙を流して酒を飲み交わしたもんだ。


 多分スペックは断然現代の方が上だろうが。俺の拙い知識じゃ限界だったんだよ。


 「よし。一旦島に帰るか」


 「そうですね…。変に絡まれて時間を食われてしまいましたし。………それで、ボスは何かやりたい事は見つかりましたか?」


 「ああ。とりあえず真っ当に生きるのは無理だなってのが分かった。今更色々なルールに従って生きるのは窮屈すぎる。俺はこっちの世界でも好き放題するぞ」


 「せっかくゆっくり出来るようになったのに…。また忙しくなるかもねぇ」


 「楽しいだろ? ぐーたらしててもいつか飽きるしさ」


 「それもそうね」


 異世界に転生して、頑張って俺の理想を叶えてからは悠々自適に暮らしてたってのに、何故か現代に転移して。


 とりあえずやる事はないかなと、俺の生まれ故郷の日本に来てみたはいいものの。あっという間にタチの悪い半グレ連中に絡まれて今に至る。


 まあ、女顔でなよっぽい男と美女二人。

 半グレ連中からしたら、良いカモに見えたのかもしれんな。


 一応、闇魔法で日本人に見えるようには変装したんだけど、逆にそれがアダになったかもしれん。


 だから、俺は変装する時は髭の似合うダンディな男になろうと思ってたのに…。二人が違和感があり過ぎるって猛反対するから…。



 で、まあ、半グレ連中の拠点に連れて来られてからは、とりあえず殺したんだけど…。


 このとりあえず殺すってのが問題だ。

 もう長い間異世界でそういう生活をし過ぎて、選択肢に『殺す』があるのが当たり前になってる。


 こんなの真っ当に生きていける訳ないじゃんね。


 「異世界と現代。支配するのはこっちの方が圧倒的に難しそうだな。ちょっと楽しくなってきたかも」


 「難しいのかしら? 魔法も恩恵も持ってない連中なら簡単そうに思うのだけれど」


 「現代は仕組みが色々複雑だからな」


 「まずはこの世界を知るところからですか。昔からボスに話は聞いていましたが、実際に来てみると別モノみたいですし」


 「そういうこった。あ、二人ともあれに手を振っておけ」


 「? 分かりました」


 「あの丸いのは何よ?」


 「面白いモノ」


 俺とカタリーナ、そしてアンジーは、部屋に取り付けてあった監視カメラに手を振って、その場を後にした。

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