第1話 帰還
「おかえりー! どうだったー? 楽しかったー? 懐かしかったー?」
「ただいま。まあ、久々って事で楽しめたし、懐かしかったのは間違いないな」
「お土産はある?」
「ああ。好きに弄ってくれ」
「感謝」
日本から転移して、島にある屋敷に帰ってきた。ローザは俺を見て飛び込んで来て、エリザベスは早速お土産をせびってくる。
俺は鞄を渡すと、エリザベスは礼だけ行ってすたこらと工房に行った。現金な奴だぜ。
「みんなの様子はどうだ?」
「今は落ち着いていますね。最初は急に勤務地から島に戻されて驚いてましたけど」
「なんの予兆もなかったからなぁ…。俺だけじゃなくて『クトゥルフ』全員で来れて本当に良かった」
椅子に座って本を読んでいたホルトに、みんなの様子を聞く。『クトゥルフ』の面々は、一瞬パニックになったものの、今は現状を受け入れてるらしい。
マジでなんの予兆もなく急に転移だからな。気付けばここに居るんだもん。意味が分からないぜ。
世界各地の領地で様々な仕事をしてた奴らも、一緒に現代に転移して来てくれたのは良かったけど。
「あちらの世界はどうなってるでしょうね」
「俺達が丸々居なくなってるなら、あっちの世界は大荒れだろうな。せっかく平穏な世界にしたってのに」
カタリーナは向こうの世界の事が気になってるらしい。正直、俺も滅茶苦茶気になる。
長い年月を掛けて、俺の理想を叶えて、本当に向こうの世界は平穏になったし、愛着もあるんだよね。
戻る方法とかも探ってみるか。
「それでこれからどうするのー?」
ローザはカタリーナが用意してくれたクッキーを食べながら聞いてくる。
「どうするかね…。裏から支配してやるぜとは言ったものの…。ノープランなんだよねぇ」
「いつもの事かー」
「言うじゃないか」
「きゃっきゃきゃ!」
ローザが生意気な事を言うので、頭をわしゃわしゃしてやる。喜んでるだけで、罰にはなりませんでした。
周りの面々もうんうんって頷かないの。
俺だって偶には計画を立てて行動しますよ。
「まあ、とりあえずは勉強か。現代はマジで複雑だからな。あっちの世界みたいに、情報でアドを取るのも、ちゃんとした設備がないと難しい」
国の仕組みやら、様々なしがらみ。
裏の世界の奴らも暴力だけの馬鹿じゃない。法の抜け穴を見つけて悪さをしてる奴とかさ。ネット犯罪なんて、俺達はマジで専門外だしね。
異世界みたいに単純じゃない。
「俺も頑張って知識チートをかましてたけど、こっちの世界には便利な道具はたくさんある。その辺も勉強していかないと、マジで置いていかれるぞ。技術が発展するスピードもかなり早いしな」
気になったらなんでもネットで調べられる時代だ。向こうの世界では情報の秘匿は簡単だったが、現代ではチラ見せでもしようもんなら、すぐに丸裸にされちまう。
どれだけ情報を隠してもハッキングとかもあるしさ。その辺も勉強しないと、何もかもが筒抜けになるぞ。
………そう考えると面白そうだと思って、監視カメラを残してきたのは失敗だったか? まあ、顔は変えてたし、二度とあの顔を使わなければ問題ないと思うが…。
なんだかんだ久々の日本で、俺も舞い上がってたのかもしれん。正直、顔バレしようが捕まろうが、すぐに逃げれるから気にしてなかったぜ。
でも、どうせバレるなら、もっとカッコよく登場してバレたい。今度から一応気を付けておこう。
「今の所、私達に有利な点は暴力だけかしら? さっき鉢合わせたチンピラ達は、この世界ではどの程度の奴らなの?」
「知らん。まあ、俺達はこの世界の人間相手には負けないと思うぞ。身体強化も使えない相手だからな。腕力だけで制圧は出来る。後は、俺達がこっちの技術にどれだけ対抗出来るかだ」
「技術?」
「ああ。現代の人を殺す技術は凄いぞ。偶に悪魔みたいな発明をする奴もいるんだ」
核、毒、武器。
とにかく人を殺す技術が凄い。
流石の俺達も核を放り込まれたり、未知の毒なんかでやられたら危ない。
多分武器は大抵なんとかなると思うが。
「まあ、基本は銃の対策してれば良い。比較的簡単に手に入るし、人間は銃で撃たれたら大抵死ぬからな」
「銃ねぇ…」
「一応見本はさっきパクってきたし、エリザベスに後で見せてもらえ。もうバラしてるかもしれんが」
「そうさせてもらうわ」
「ローザも行くー!」
アンジーとローザが揃って、エリザベスの工房に向かった。どれほど脅威になるか気になるんだろう。
多分身体強化をしてたら、銃の弾が当たっても『いたっ』ぐらいで済むと思うが。俺からしたら、カタリーナの魔法の方がよっぽど威力があるように思うし。
後で実際に試してみよう。
「お金も稼がないとなぁ…。向こうの世界では使っても使っても無くならないぐらいには金持ちだったってのに…。また一から稼ぎ直しだ」
「何かアテはあるのですか?」
「一応な。一時凌ぎにはなるけど、有力者とコネも出来るし、手っ取り早いのは間違いない」
光魔法って便利なんだよねぇ。
病気でくたばりそうな億万長者とか、怪我で苦しんでるスタースポーツ選手。探せばいっぱいいるだろ。
相手を選ばないと面倒になるけど、コネが出来て、恩も売れて、お金も稼げる。
中々ボロい商売になりそうだ。
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