サバイバル×EARTH【ゲートウェイが終わるまで】

天秤アリエス

サバイバルEarth 宇宙ゲーム編

第一部 地下都市ruby

第1話 光と闇の宇宙ゲームー原初銀河ー

 静寂だ。虚無だ。真っ白でもなく、真っ黒でもない。

 ただ、そこに或るだけの。


 空間。存在。静寂に光。


 重厚なる。漆黒の闇から、突如、這い上がるような震動と閃光が大きく同時に響いた。讃美歌であろうか、静かに流れだした波動は、忽ち闇を凌駕するほどに響き渡る。

 集合した波動は、ひとつの〇を作る。

 それはウロボロスに変貌しインフィニティ♾コードを形作った。


 コチコチと何かの音。時の合間に響く音叉か。


 ―――ライト―――


(呼ばれた。そうだ、僕は「ライト・光」だ)


 「ライト」は目を覚ましたが、おかしいと首をひねった。ここは宇宙。ブラックホールの底辺だ。音など鳴りようもないのに。

 波動がせめぎ合うように鳴動して、音色を立てている。聞こえる。

 「ライト」は自分が瞼を動かせることに気がついた。

 ――意志が芽生えている。そう、これは「意志」だ。次に目を閉じてみると、震動が指先に、そう、指先がある。そうして「ライト」は耳を澄ませている己に気がついた。音を聴きとっている。

 とてもとても怖い音だ。重みが空間を引き裂くような。

 次に何かを「思い浮かぶ」自分に気がつく。「意志」を認識している自分に気付く。「ライト」は目は開けられるのだと気がついた。ゆっくりと、張り付いた瞼を「自分の意志」で持ち上げていく。


 蛭子から、自分の意志を伝える何かへ。


 双眸に光が宿った。


 僕は、誰?


 答はない。遥か遠くで、鳴動が低く、空間を揺らがしているだけだ。「ライト」は胸が詰まる感覚を憶え、「ア……」と声を出せる己に気がついた。


 ボクは誰

 ぼくは誰。

 僕は……誰だ。


「ぼくはだれ?」


 知りたいと願う奥底の気持ちに灯が宿る。

「ライト」は産声を上げた――。


****


 遠き宇宙の片隅でのbirthは、空間を揺らがせていた。宇宙初の「自我意識」の誕生に数々の星々は瞬いて喜んで祝福を送ったが、やがて声は消えた。

 神の誕生は誰もが待ち望んでいた瞬間だった。

 しかし、誤算があった。

 産まれれば、死す。

 素晴らしきはずの自我意識はいち早く大原則のルールを知ってしまい、絶望したのである。


 星々の合間を悲鳴が駆け抜けた。産まれれば、死す。その理を「ライト」は拒絶した。凄まじい風と、轟音は、ブラックホールを突き抜けて、銀河系の主幹「ホワイト・サン」までもを襲った。

 宇宙は磁気嵐に覆われ、産まれたばかりの「ライト」はまた沈み込んだ。


 死にたくない。

 でも、産まれて来てしまったから、いずれ、ぼくは死ぬのだろう。


「タイシタコトデハナイ」


 闇からの重い声がする。


「自分は何者でもない」

「たいした存在ではない。宇宙の塵だ」

「死すことは、素晴らしい」


 目を開けた「ライト」は生まれると同時に絶望を知った。


 ……誰も、声を掛けないで。


「ライト」は今や絶望の中にいた。「産まれたのに、死が近づくんだ」その理が理解できない「ライト」に「ダーク」は囁く。全く同じ顔だと分かる。目を恐怖に怯えさせる「ライト」に闇は膝をついて問うた。


 暗闇に、光の輪郭を持った目がライトを捉える。


「ならば、生きるか死ぬか、この宇宙でゲームをやってみないか?」 

彼は名前を「ダークネス」と名乗った。ダークネスとは、「暗くて明暗が分からない」「何も見えず恐い」「光が見えない」という意味をも為す。まさに深淵だったのだ。

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