ソリストの協奏 —Soul of Lament: 嘆きの魂—

天恵月

第1章 星は漆黒にて輝く

Pro.1 開幕




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「どうしてみんないなくなっちゃうの……嫌だよ……」


 少女は嘆くように呟いて誰もいない玉座に手を伸ばす。血の気のない肌、透き通るような白髪、そして血のように真っ赤な瞳が炎に照らされ輝いていた。

 火の粉が肌に降り注いでも払うことすらせず、少女は王座にしなだれかかり、真っ白なまつ毛をそっと伏せた。


「ああ……。とうとう私をお許しくださらなかったのですね」


 いよいよ城のあちこちが崩れ、少女の周りにも次々とガラクタが落下した。かつて栄華を誇っていたであろう城の中には、少女を助けに来るものは誰一人としていなかった。


「寂しい。何もかもを壊したくなるくらい寂しいの。誰か私と一緒にいて、お願い……」


 少女はそう言って目を閉じた。一筋の涙が、彼女の白い肌を滑り落ちていった。







―――――



「AIのおかげで人と繋がらずとも生きることができるようになりましたけれども、対人関係に不安を抱えた人でも就労できるようになった一方で、コミュニケーション不足により孤独感を訴える人の数も急増しました。AIを使う人とAIに使われる人にはっきり分かれてしまったことも、社会不安の原因に挙げられるでしょう」


「大学付属幼稚園放火殺人事件から五年たった今、格差が広がる社会への不満の声がますます募る中で、このような悲惨な事件を繰り返さないために私たちはどうすべきなのでしょうか」


「趣味の世界……例えばゲームなどで交流関係を築くことが有効ではないか、と言われていますね。特に一年前にサービスを開始した『Soul of Lament』というゲームは、AIによって数え切れないほどのスキルや装備が作られており、それらを探すプレイヤー同士の交流が盛んだそうです。開発グループは多発する無差別殺人事件に対して、『私たちもこの現実を嘆かわしいと思っている。SoLが救済となれば嬉しい』と、インタビューを通して切実な考えを表明しました――」


 人同士の繋がりが希薄になった超デジタル社会。孤独感に苛まれる人々の受け皿となったのは、VRMMOだった。

 『Soul of Lament』――通称『SoL』。悲嘆の魂という名を冠するこのゲームは、惜しみなく注ぎ込まれた最先端技術により、とてつもない自由度を誇る。

 明確なストーリーが定まっているわけでもなく、何をするも何を生み出すもプレイヤーに委ねられた世界。

 それは働く必要もなく生きがいもない人々にとって、自分の意志で何かを成し遂げ、他の誰かと語り合うことができる、貴重な居場所なのであった。

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