【絶対にエロ展開を阻止する俺vs絶対にエロ展開になるAI】

cs放送

プロローグ

(俺)

 俺は守野歩もりのあゆむ、なんてことはない普通の高校生だ。

 いいや、なんてことはない普通の高校生”だった”――。


(AI)

 高校で彼女なんてできるはずがなくて、小中高と勉強もそこそこに運動ばかりしてきた。

 部活は野球をしていたけれどレギュラーになれるわけもなく、なんなら野球部そのものが弱くて春夏合わせて一勝もできていない。でもスポーツは好きだった。だからもちろん甲子園にもあこがれはあったけれど結局一度も行けなかった。あと一歩が足りないというやつなのだろう。俺より才能のある人間は山ほどいて俺にはあと一歩の壁を越えられなかったというだけの話。きっと俺は自分の人生がこんなふうで終わるんだとなんとなくわかっていた。

 だから、そんな自分の人生を変えたかったのかもしれない。

 つまりこれは「何かを変えたい」という願望の表れなのだと思う。

 そんな俺の前に、ある日突然神様みたいなおじいさんが現れてこう言ったのだ。

 ――君は世界を救ってみたくはないか? もちろん最初は「何言ってんだこのじいさん」と思ったし、まともな頭をしていたらそんなことを真面目に言う奴とは関わらないほうがいいに決まっている。けれど俺はその提案に乗ってしまったのだ。

 俺が世界を救えば女の子にモテるかもしれない――なんて


(俺)

 ことを考えて。

 しかしあれから一週間。

 特に何も起こらなかった。強いて言うなら、今日の転校生がイベントと言えるイベントなのだが、俺はそんなのに興味はない。

 だって世界が危機に瀕しているのだから、転校生にかまっている暇など無いのだ。


(AI)

「ふう……」

 俺は深いため息を吐いた。

 それから窓の外に視線を移す。

(世界を救うって、一体なにをすればいいんだろうな……)

 具体的になにかをしてほしい、なんてことは言われなかったけれど、でも神様みたいなおじいさんならきっと世界を救うためのヒントくらいくれるはずだろう――なんて考えて、俺は授業中であるにも関わらず教科書も開かずに窓の外に目をやったのだが……その次の瞬間、俺の頭の中が真っ白になった。

 なんと校庭で女の子がトラックに轢かれそうになっていたのである。

「……っ


(俺)

 俺は窓から飛び出した。そう、窓からだ。

 この教室は3階。

「わあああああああ!!!!!」

 やばい、死ぬ。


(AI)

「って、うわあ!?」

 死ぬかと思った。だがなんと奇跡が起きた。俺は空を飛んでいたのである! そして宙を舞う俺の目に映ったのはトラックに轢かれそうになっている女の子と、そのトラックをなんとか止めようとする運転手の姿だった。

 だがしかし時すでに遅し。ブレーキを踏んでも間に合わない!

「きゃああああ!」

 女の子の悲鳴が聞こえたような気がしたが、俺にはもうどうすることもできない……!

(神様ならきっとなんとかしてくれるはず……っ!!)

 そんな願いと共に俺は


(俺)

 トラックに向かって指で銃を作り、それを撃つ真似をしてみた。


 ――。


 そんな轟音と共に俺の目に写ったのは、抉れた校庭の地面と倒れるトラックと轢かれそうになってかがみ込んでいる一人の少女だった。

(まさか、これを俺がやったのか?)


(AI)

 俺はトラックを止めたのか? 俺はしばらく状況が理解できなかった。

 だがやがて俺の頭は状況を理解した。女の子は無事だったし、トラックも無事。奇跡的に怪我人は出なかったようだった。

(ああ、よかった……)

 そう思ったのもつかの間である。

「うわああああああ!トラックが!!!!」

 そんな声が聞こえ、慌てて振り返ると教師が血相を変えてこちらに走ってきていた。

(……やべっ)

 俺は今になって思い出す。この学校は3階なのであると! そう、教室から飛び降りた俺は奇跡的にトラックを止めることに成功した。

 だがしかし、俺の足は地面に着くことはなく、俺は今空を飛んでいるのである。

「う、うわあああ!!」

 そしてそのトラックをとめた代償は俺の体だったというわけだ。

 かくして俺は、空を飛ぶトラックに轢かれて死んだのだった。

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