第23話 ギルド長の依頼
「レインさんがご無事でよかったです」
「メルトさんのほうこそ、変わらずだな」
「ええ、変わらずです。あ、そうです、これを先にお渡しますね」
冒険者ギルドに訪れ、いつものようにメルトさんと会話をしていると、大金の入った袋を渡された。
「これが探索、調査の報酬金です」
「お、多くないか?」
どう見たって、本来渡される報酬金の3倍はあるぞ。
ニコニコなメルトさんを見て、俺はこのお金に裏があると思った。
「で、この後何があるんですか?」
「察しがいいですね。ギルド長が遺跡内で何があったのか、詳しく聞かせてほしいっと」
「遺跡内?それならテラたちからすでに聞いてるだろ?」
「遺跡内にいた全員に聞いてるみたいなので、そんなことを言われても」
ギルド長、それは冒険者ギルドを仕切るトップ。冒険者ギルドのギルド長に選ばれるのは冒険者引退後、最低でも五つ星冒険者で、かつ高戦歴残したものがなることができる役職。
実力は言うまでもない。
「わかった、それじゃあ、ギルド長の部屋に案内してくれ」
「物分かりがよくて助かります」
こうして、俺とテラはギルド長の部屋に案内された。
□■□
「君がレイン・クラフトくんだな。他3人から話は聞いているよ。みんなレインくんのおかげで勝てたと賞賛していた」
「そ、そうですか」
「おっとまずは自己紹介からだったな。私はフール、エルフだ」
ギルド長フール。ギルド長を務める前は六つ星冒険者として活躍していたと聞いたことがある。
まさか、冒険者ギルドのギルド長をしているなんて。
「その反応、私を知っているね。まあ、こう見えても冒険者の中では伝説をいくつか作ってきたほうだからな。それこそ、レインくんの兄、アルニーとも、伝説を作ったことがある」
「に、兄さんを知ってるんですか?」
「当たり前だ。私が引退する前、戦いを申し込まれてね。それで、負けてしまった」
兄さんがギルド長フールを倒した?やっぱり、兄さんはすごい。
「やっぱり、兄弟似るものだな。さて、雑談はここまで、早速だが、遺跡内で見てきたすべてをレイン君の言葉で教えてほしい」
俺はフールギルド長に包み隠さず、話した。と言っても、漆黒の竜を倒したあと、何が起こったのかは教えずに。
「なるほど、大体、内容は一緒だな。ありがとう…………しかし、よくもまぁ、竜を倒すなんて行動ができた。何か、倒せるという確信があったのか?」
「いえ、漆黒の竜はかなり傷ついていたので、それにあの状況では戦う以外に選択肢はなかったから」
「そうか、レインくんはやっぱり、アルニーとよく似ているな」
「似てませんよ。俺と兄さんじゃ…………」
「そうか、では単刀直入なんだ。実は君たちに一つ依頼を受けてほしくてね。報酬は弾むよ?」
「依頼ですか?」
ギルド長、自ら俺たちに依頼?絶対にろくなもんじゃない。
兄さんは言ってた。お偉いさんの提示する依頼ほど、めんどくさいものはないって。でも、ここでギルド長と仲を深めれば、依頼の
「内容は?」
「…………君たちが遺跡から帰ってきた同時に遺跡が崩壊した。それは知っているだろ?その後、今までにないことがこの街で起こっているんだ」
「なんですか、それは?」
「今までこの街が魔物に襲われたことがなかった。だが、ここ最近、少しずつ魔物たちがこの街に向かってきているんだ」
「魔物が?急にどうして?」
「私の予想では、遺跡が崩壊したからだと睨んでいる。おそらく、あの遺跡は魔物除けとしても機能していたんだろう」
遺跡が魔物除け?そんなことあり得るのか?
「今は、ティルミナ聖教の騎士とルミナ様の力を借りて、なんとか抑え込めているが、たとえ騎士でも女神の加護を受けたルミナ様であろうといずれ限界を迎える」
「つまり、加勢しろと?それだったら、断ります。俺達が行っても足手まといになるだけです」
「うん?勘違いしないでほしいのだが、加勢しろとは言っていない。内容はむしろここから本題だ」
「それってどういう…………」
「ルミナ様の情報によると、魔物をこちらに仕向けている輩がいるらしいんだ。それが事実のかはわからない。だがルミナ様のいうことだ。ほぼ確実だろう。だから、君たちにはその魔物を仕向けている犯人を捉える、もしくは殺してほしいんだ」
「な、なるほど…………」
この依頼、すでにティルミナ聖教がかかっているのか。しかも、どう考えたってまだ一部しか知らない人の情報ばかりだ。
フールギルド長、絶対に断れない状況を作って、その上で依頼してきやがった。
しかし、思った以上にやばい状態だ。もしこのままいけば、いずれこの街は魔物巣窟になり、たくさんの被害出てしまう。
うん?というか、なんでこんな大事な依頼を俺たちに?六つ星冒険者がいるからか?でも俺は二つ星冒険者だし、一体、何を考えて…………。
「どうして、この依頼を俺に?こんな重大な依頼はもっと凄腕の冒険者に託すべきでは?」
「たしかに、そうかもな。でも、君なら何とかしてくれるような気がするんだ。それに、君は二つ星冒険者でありながら、仲間を統率しつつ、見事、竜を倒すことに成功した。これは、三つ星冒険者でも、四つ星冒険者でも、言うなれば、五つ星冒険者でも、叶わないことだ!それをなした、君ならっと期待してしまう私を許してほしい」
顔を近づけるフールギルド長。
「か、顔が近い」
「つまりだ!これは君にとっての分岐点だ。もしこの任務を成功させれば、君はその時、二つ星冒険者としてありえない業績を得て、世界に名をとどろかせる!レイン・クラフト、君は兄のようになりたいのだろ?」
この人、本当に顔が近い。でも、たしかに、その通りだ。遠かった兄さんの背中が、これを機に一気に近づける。そんな機会はきっと人生で一度あるかどうかだ。
でも、なんとなくだが、このフールギルド長は底が知れない。何か企んでいるんだろうけど…………くそ、俺はどうすれば。
「レインには目的があるんでしょ?なら、迷う必要なんてない。私はどこまでもついてくよ」
テラは俺の顔を見て、静かに笑った。
本当に、テラにはいつも助けられているような気がするな。
「テラ、お前は俺のお母さんかよ」
「いてっ…………痛い」
「でも、ありがとな。フールギルド長、その依頼、受けます」
「そうか、それはよかった」
何か企んでいるかもしれないけど、手段を選んでなんていられない。それに、テラと一緒なら何とかなるような気がするんだ。
「それじゃあ、早速だが、教会に向かってほしいんだ」
「教会ですか?」
「ああ、詳しいことはそこで知ることができるはずだ。というわけで、検討を祈るよ、レインくん、そして六つ星冒険者のテラちゃん」
こうして、俺達は教会に行くことになった。
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