集団転移に巻き込まれたが、「お前は無能」と追い出されたので最強を目指します!

高峰悠華

第1話 異世界転移させられたから冒険者になる

 朝早く起きてクソ重い鞄をで担い電車に乗る、しかも田舎だから学校までの距離から考えて5時に起きる必要がある。そのため毎朝電車の中で眠っている。1時間くらい眠れるから少しは楽になる。そんないつも通りの朝を過ごしていたのだが・・・激しい揺れとともに目を覚ます。気が付くと同じ車両の人間たちが騒いでいた。そりゃ騒ぐって、俺もビビってるし。


「おい!!!ここはどこだ!!」


そこそこ年齢が行ってるであろうおっさんが怒鳴り続けている。


「皆様、お目覚めでしょうか?」


女の声が響く、入ってきたのは奇麗なドレスに身を包んだいかにも王女って感じの女だった。その横には武装した男が三人ついている。


「王女の御前だぞ、跪け!!」


騎士風の男が叫ぶ。いきなりくるなりなんだこいつ・・・


「結構です、私たちが呼び出したのです。」


「あの、いったいなぜ僕たちはここに?」


イケメンの男子高校生が前に出て王女?に話しかける。


「はい、それは――」


王女が語ったのは、今魔族と戦争中であり、そのため俺たちが召喚された。なんでも異世界から召喚された人間にはレベル上限がなく、女神さまの慈悲により強力な能力が与えられていることが多いとのこと。レベルって何だよ、ゲームか?


「今から皆様のステータスを調べさせていただきます。この水晶に血を垂らしていただくとこちらの紙にあなた方のステータスを出力してくれます。」


なるほど、遺伝子情報とかそんな感じのを読み取るのか・・・


「では貴方から。」


イケメン男子高校生が血を垂らす。


すると騎士たちから歓声が上がる。


「すごいぞ!!『限界突破』に『成長促進』そして『剣術』も!!」


「そして何よりこのステータス!このレベルで通常の倍以上のステータスだ!!」


「まさに伝説の勇者と違わぬ素質!!」


最初にあたりを掘り出したからかめっちゃテンションが上がっている。


そして順調にステータスを調べ、最後は俺の番になった。


「さ、どうぞ。」


血を垂らすと青白い光が周囲を包み込む、まぶしさに目をつむる。


「こ、これは・・・」


「あまりにもひどい・・・」


あまりにも失礼だろ。そんなひどいのか?と思って覗き込んでみる。攻撃と耐久以外がさっき聞いた平均値を下回っている。そして俺以外の召喚者はスキルを2個以上持っていたのに俺は『抵当』の一つだけだった。


「貴方はとんだ無能でしたね、消えてください。」


「は?テメェが勝手に呼び出しといて自分勝手かよ。せめて向こうに送り返せや。」


さっきまで敬語で話していたが余りに理不尽な物言いに思わず反論してしまう。


「貴様のようなゴミを送り返すのにそんな魔力を使えるか!!」


余りにもないいようだろ。ポケットに入れておいたシャーペンを取り出し、すぐ横にいた王女を捕まえ喉元にシャーペンを当てる。完全に油断して少し距離を置いていた騎士どもの落ち度だ。


「な、何を!?」


「あ?テメェら好き放題言っておいてなにもされないとでも?」


「こ、この・・・!」


剣を抜こうとする騎士たち。


「いいの?お前は俺を殺せるかもだけどこいつの喉掻っ切るくらいはできるぞ?君らどう責任取るんだろうね?」


「ぐっ・・・」


抵当・・・つまり契約のカタにものを借りると。できるといいけど・・・


「おい、そこから一歩も動くなよ?」


「わかった・・・」


三人とも承諾する。これで契約は成立だ。


「おい、お前らのスキル教えろ。」


「な、何故そんな・・・」


「ん?」


喉にペンを近づけると悔しそうに答え始めた。


「『身体強化』『魔法速射』『魔法付与適正』」


リーダーっぽい奴は魔法剣士ってやつか。そういえばなんか変な感じの剣ぶら下げてるわ。


「『速度上昇』『筋力強化』」


「『硬化』『シールド』」


なるほどなるほど。


「じゃ、死ね。」


喉に向かってペンを急接近させる。


「ま、待て!!」


はい、動いた契約違反。


「もういいや、じゃあ俺は出てくからお前ら追いかけてくるなよ?追手もな。」


「わ、わかりましたわ。」


王女が承諾した。


そのまま城から出ていく。このまま別の国まで逃げるか。




 そういえば文字読めるんだな。召喚者仕様か?取り敢えず王城から手切れ金として貰った金を使って腹ごしらえでも・・・金貨3枚もらったし。王女を人質に取られたら言い分を聞かざるを得ないだろうな。


「お、冒険者協会・・・」


まんまゲームだな。いいにおいするしここで飯にするか。


「すみません、冒険者登録したいんですけど・・・」


「はい!いらっしゃいませ!登録ですね!ではこちらに血を一滴お願いします!」


さっきステータスを調べたときに使ったのに似たものが出てきた。


「はい、ありがとうございます。ハルト様ですね。Fランクからのスタートとなります。ではこれを飲み込んでください。」


「え?」


カードを差し出される。え、飲むの?これを?


「はい、冒険者協会の独自技術でしてこのカードを飲むと『ステータスオープン』の掛け声でいつでもステータスを確認できるようになります。」


へぇ・・・すげぇ技術だ。


「んん・・・お゛っ!はあぁぁ・・・飲み込めた。」


めっちゃえづいた・・・登録を終えた俺は併設されている食堂で食事をとるとしようか。


パンとスープだけだけどおいしいな。素朴だけど小麦の味がしっかりしたパンに玉ねぎの甘みが溶け込んだスープ。てかこの世界にも玉ねぎあるのね。


腹ごしらえも終わったし、隣国に行く馬車に乗り込む。ちょうど一人分空いたらしい。


「兄ちゃん、珍しい格好だけど旅人かい?」


恰幅のいい濃いめのひげのおっさんが話しかけてきた。


「えぇ、でもこの服目立つので買い換えたいんですけどね。」


「なら私が買い取ろう。」


「いいんですか?」


「実は私は商会を営んでおりまして、主力商品が服なのです。その服の斬新な発想、是非ともほしいのです。勿論お金は弾みますし、出来上がった場合一着プレゼントします。」


普通の安いパーカーなのにいいのか?まあ良いって言ってるしいいんだろ。


「ではよろしくお願いいたします。」


「はいお任せください!」


気のよさそうなおっさんでよかった。少し雑談しながら馬車の旅をする。


順調に馬車が進んでいたのだが途中で急に馬車が止まった。休憩の時のようなゆっくりとした停車ではなく緊急停車といったほうがあってるタイプの止まり方。


「モンスターだ!!数が多い冒険者がいたら加勢してくれ!!」


加勢するべきだけど俺武器持ってねぇよ・・・こういう後先考えないところ良く怒られてたな。


「おい!さっき冒険者登録してた坊主!!武器ねぇのか!!これやるから戦え!!」


と言って片手剣を投げ渡される。剣道の竹刀と違って重みがすごい・・・


「兄ちゃん頼んだぞ!」


「は、はい!!」


着ていたパーカーを脱いで馬車から飛び出すと狼みたいな四足獣とあからさまにゴブリンみたいなのがいた。


「『ステータスオープン』」


スキルの欄を見るとさっきの兵士のスキルが追加されていた。


「おい!ボサっとすんな!!」


ゆっくりステータス見てる場合じゃねぇ!!


剣を振り下ろそうとするも手が止まる。人の形してる生物を殺すことに抵抗がある。思うように体が動かない。さっきみたいに命を盾に脅しかけるくらいなら余裕だ。


「『シールド』!!」


自分を守るように薄い壁を貼る。なんとか守れた。


「ガァアアア!!!」


「くっ!」


守り切れないかも・・・やらなきゃ、やられる!!


「うわあぁぁぁぁぁ!!!」


闇雲に剣を振り回す、当たらないが攻めてこない。まだ救いなのは振れないような重さの剣ではないことだ、大体1㎏くらいか。毎日5㎏の鞄担いで登校してんだこれくらい余裕だ。


「きゃあぁぁ!!」


ゴブリンの打ち漏らしが馬車の親子に向かっていく、ほかの人たちは!?だめだ間に合わない・・・!


「『速度上昇』『筋力強化』!!うおぉらぁぁぁ!!!!」


すんでのところでゴブリンの首を跳ね飛ばす。


「はぁっ・・・はぁっ・・・」


殺した・・・俺が・・・殺した。


まだだ!気を抜いてる場合じゃない、まだモンスターが攻めてきている。


そこから俺は一心不乱に剣を振り敵を殺した。気が付くと体が返り血まみれになっていた。


「ははっ・・・俺が殺したのか、この数を・・・」


悪いことじゃないと思っていても呼吸が乱れる。視界がぶれて手が震える、鼻腔入ってくる血生臭さでクラクラする。


「おい!どうした坊主!!」


「いえ、モンスターを、というか生物を殺したのが初めてなもので・・・」


「そうか、でもそんな感じでどうして冒険者になったんだ?」


「必要に迫られてというかなんというか・・・」


異世界から召喚されてきましたなんて言えるか。でも少し落ち着いてきた。そうして話しながらモンスターの魔石を拾っていく。魔石というのはモンスターの核のようなものでとてつもない魔力を秘めている。この魔石を砕いて魔力を吸収して一時的に魔法の出力を上げることができる。他にも防具に埋め込むことで特殊効果を付与できる。っておっさんが教えてくれた。


この世界のモンスターやスキル魔法について少し教えてもらいながら粗方拾い終えたところにさっきの親子がきた。


「お兄ちゃんさっきはありがとう!」


母親と手をつないだ女の子が俺にお礼を言う。少しつたない言葉だけど、覚えたばかりの言葉なのだろうけど、俺はその一言で救われた気がした。

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