鈴木太郎との会同②
「ははは、しばらく会わなくても君は変なものを引き寄せる。やっぱり僕のせいじゃなかった。そう認めるしかないね」
「うるせえ。お前に関わってから、ろくなことがない。つまりお前が原因だ」
「なんて理不尽なんだ。そう思わないかい?」
「あ、えーっと……」
「おい、困らせるな」
東嶋と鈴木の口喧嘩に巻き込まれたくないと、遥香は作り笑顔で乗り切ろうとする。
何を言ったところで、二人は止まらない。少ない時間でそれを学んだため、遥香はとりあえず返事を濁してなんとかごまかしている。
あれから、鈴木の家である見た目豆腐ハウスに二人は招き入れられた。どこから入るのかと不思議に思っていた遥香は、鈴木が近づいた途端壁に切れ目が入ったのに驚かされる。
おそらくスイッチで動かしたのだろうが、ハイテクさと見た目では全く分からないほど計算されて作られている技術力の高さに、舌を巻かざるを得なかった。
東嶋はさっさと中に入ってしまったが、扉をしばらく観察したほどだった。そして、恐ろしく金がかかっているという結論に落ち着いた。
中は天井が高く、そして外観と同じく真っ白だった。家主のこだわりからか、置かれている家具まで白で統一されている。
そもそも、鈴木自体も全身白コーデだった。細身で、髪は後ろでハーフアップにしている。さらには薄い水色のサングラスをしているため、見た目は普通ではない。
物腰は柔らかいが、油断できそうにない。
相手には気づかれないように警戒する遥香に、全てを見通すかのような視線を鈴木は向けた。
「その子に会いたいなら、山に登るといい」
「……え?」
急に山に登れと言われ、遥香はきょとんとする。そんな彼女を無視して、鈴木は話を続けた。
「そうだなあ。〇〇山なんてどうだい?」
〇〇山。
聞いたことのない名前に、一体どこだと聞こうとしたが、その前に東嶋が動いた。
「ふざけんなっ!」
「ちょ、東嶋さん!?」
鈴木の胸ぐらを掴む目は血走っていて、怒りにあふれていた。止めなければ暴力沙汰になる、一触即発の空気になんとか遥香は体を滑り込ませた。
「急にどうしたんですか?」
東嶋はこんなことをする人ではない。彼と目を合わせて、落ち着かせようと話しかける。
遥香に乱暴な真似をするのはさすがにできず、大きな舌打ちをして東嶋は鈴木の胸ぐらを掴んでいた手を振り払った。
「あーあ、怒らせてしまった」
「東嶋さんは、どうしてあんなに怒ってたんでしょう?」
訳を知っていそうな鈴木は、遥香の問いかけに対しこともなげに答えた。
「〇〇山で、彼の恋人は死んだからね」
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