書道部の部長が文字の無い異世界で崇められる

青木タンジ

異世界への転移

第1話 日常からの転移

春の陽気が教室を包む、平凡な午後。ユウマは数学の教科書に目を通しながら、窓の外で遊ぶ子供たちの声に耳を傾けていた。隣の席ではアイコが先生の質問に元気よく答えており、その声が教室に響いていた。


「ユウマ、ちゃんと聞いてる?」隣の席からタケシが小声で囁いた。ユウマは小さく頷き、再び問題に目を落とした。


突然、教室が強い光に包まれた。子供たちの悲鳴と驚きの声が一斉に上がり、教室は混乱に陥った。ユウマは目をしっかりと閉じ、何が起こっているのか理解しようとした。


光が消えたとき、彼らはもう自分たちの教室にはいなかった。目の前には見慣れない部屋、厚手の布でできたベッド、粗末な木製の机があった。ユウマは慌てて立ち上がり、周囲を見渡した。彼のクラスメートたちも同じように、混乱と不安の中で部屋を出て集まっていた。


「ここはどこだ?」

「ママ!パパ!」

「なんでこんなことに…!」


クラスメートたちの声が廊下に響く。恐怖、不安、そして強い疑問が彼らの心を支配していた。ユウマはそんな中で、冷静さを保とうと努力した。彼は深呼吸をして、アイコ、タケシ、エミに近づいた。


「とにかく落ち着こう。一緒に外の様子を見に行こう。」


彼らは慎重に部屋を出て、建物の外へと向かった。外の光景は、彼らの知っているどの風景とも異なっていた。遠くに見える巨大な城、その周囲を囲む壮大な自然。そして、その中心には、彼らがまだ知らない村が広がっていた。


その時、重厚な扉が開き、中世の服装をした人々が現れた。彼らの先頭に立つのは、威厳のある老人だった。


「ようこそ、エルドリアへ。我々は王の命により、あなた方を迎えに参りました。」


老人の言葉に、子供たちは更なる恐怖と好奇心を感じた。彼らは一様に、この未知の状況に対する恐れと驚きを抱えていた。しかし、同時に、この新しい世界が彼らにどんな冒険をもたらすのか、その答えを見つけるための旅が、今始まろうとしていた。

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