第20話 他人の恋路を邪魔するな 立花視点
あたしの名前は
自分で言うのもなんだけど、容姿やスタイルにはちょっと自信があるわ。
美人の母親から受け継いだ顔に、クラスの女子の中でも大きい方だと話題の胸。
手足も長い方だと思うし、肌もキレイだってよくクラスの女の子たちから褒められているの。
髪も伸ばしていて、一年くらい前に高校に入学したのを機にポニーテールにするようになったわ。
この髪型は意外と男子に評判で、女子の中には『男子ウケを狙っているんじゃないか』と邪推する子もいるんだけど、あたしは別にそんな理由でこの髪型を選んだわけじゃない。
その証拠に、あたしには彼氏がいない。
一応、何度か告白されたことはあるんだけど、すべて断ってきたの。
だってあたしには、小さい頃からずっと想いを寄せている男の子がいるから……
その男の子の名前は
小さい頃から優しくてまじめで失敗してもめげない人だったわ。
本人は自分に自信がないみたいだけど、あたしは彼の長所をたくさん知っている。少なくとも、あたしにとっては理想の男の子なの。
そんな片想いを両想いに変えたくて、いろいろ努力したわ。
彼に可愛いと思ってもらえるようにメイクを覚えたし、髪も毎日欠かさず手入れしている。
他にもスタイル維持のために努力したり、ファッション雑誌を読んでオシャレに気を使うようにしたり……とにかく自分なりに必死に頑張ったの。
“可愛い姿”を維持する努力は大変だけど、それもこれも彼に振り向いてもらうため。そのためだったら、どんな努力も苦にはならなかったわ。
だけど、蒼介は高校に入学したあたりから変わってしまったような気がする。
一日中上の空で、授業にも身が入っていない様子だった。
仲の良い友だちと話している時でさえ、心ここにあらずといった感じだったの。
あたしから話しかけても空返事ばかりで、一緒にいる時間もどんどん減っていった。
中学までは一緒に登下校をしていたのに、ついにはそれすらも拒否されてすごく悲しかったことを覚えてる。
もちろん最初は慣れない高校生活に戸惑っているだけかと思って様子を見てたんだけど、入学から何ヶ月経ってもその状態が続いていたからさすがにおかしいと思ったわ。
そして、一緒に登下校をしてくれなくなったあたりでこれ以上見守ることもできなくなって、調査を始めることにしたの。
もしも蒼介が何か深刻な悩みを抱えているなら、力になってあげたい。大したことはしてあげられなくても、せめて一緒に悩んであげたい。その一心だった。
でも、調査といっても探偵ではないので相手の抱えている事情を完璧に把握することなんてできない。
あたしにできることは、せいぜい蒼介の友人たちに何か知っていることがないか訊いて回ることくらいなの。
案の定、友人たちは詳しい事情を知らず大した成果は得られなかったわ。
一度本人に直接「何か悩んでいることはない?」と訊いたこともあったけれど、その時は「別に悩んでない」とはぐらかされてしまったから、蒼介本人に事情を訊くことはできない。
完全にお手上げ状態になってしまったの。
一応その後もタイミングを窺って探りを入れてみたけど、特に得られた情報はなし。
本人も迷惑そうな顔をしていたから、それ以上関わるわけにはいかなくなって、あたしは諦めることを余儀なくされてしまった。
それ以降あたしと蒼介の交流はさらに減り、高校二年生になった今はほとんど会話をすることもなくなったわ。
一年以上蒼介を悩ませているものの正体も結局わからずじまい。
だけど、あたしは今でも蒼介のことが好き。
恋人になれなくても、せめて昔のような仲のいい関係に戻りたい。一緒に登下校だってしたいし、休日には遊びに行きたい。
常にそんなことを考えながら過ごしていたわ。
早く蒼介の悩みが自然に解決すればいいのに――そう思っていたのだが、あたしはある日突然予期せぬタイミングで蒼介の悩みを知ることになる。
それは、とある平日の放課後。
帰宅しようと、学校から最寄り駅までの道を歩いている時だった。
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