第2話 どうやら世界がおかしくなったらしい

 目が覚めた。

 ああ、よく寝た。

 仕事したくないです。だるいです。

 まあ、休みだからダラダラしても許されるのだー。


「でも、決まった時間に起きるあたり、ホント社畜根性が体に染みついてるよなぁ……」


 トイレ……おしっこ。

 ずるずると体を引きずり、布団から出る。

 トイレで流して、ふうすっきり。


 というか、なんか外がうるさい。

 警報とか、サイレンとかそんな音が聞こえるんだけど……?

 朝から何なの?

 ま、いいや。


「腹減ったな……」


 結局、昨日は帰ってすぐ寝たから、何も食べてない。

 うん、朝食食って、二度寝しよ。


「えーっと、あ、米炊いてねーじゃん。しかたねー、パンにするか……」


 卵とベーコンはあるし、トーストにベーコンエッグだな。

 よし、ジブ◯飯にしよう。

 ぱずーが食ってた奴。


「……ん?あれ?」


 おかしい。

 冷蔵庫の電気が消えてる。

 

「うわっ、牛乳ぬるっ……」


 冷蔵庫から出した牛乳がぬるい。

 キンキンに冷えたのが飲みたかったのに。

 氷を取り出そうと冷凍庫を開けると氷が解けて水浸しになっていた。


 どうなってんだ?

 もしやと思い、ひもを引っ張って部屋の蛍光灯をオン。

 つかない。

 

「……あちゃー、もしかしてブレーカー落ちたのか?」


 昨日雷でもあったのかな?

 いや、天気は良かった気がするけど。


 仕方なく玄関へ移動し、ブレーカーを上げる。

 つかない。

 どうなってんの?


「おいおい、もしかして停電か?」


 この辺り一帯が停電してるとか?

 さっきから鳴ってるサイレンはそのせいか。

 仕方ないなー。頑張れ東◯電力。

 ガスは……うん、大丈夫だな。

 

「ま、しばらくすれば大丈夫だろ。それより飯だ、飯」


 フライパンを置いて、火をオン。

 マーガリンを溶かして、ベーコンと卵を投入。

 

「オーブンは使えないから、パンもフライパンで焼くか」


 ベーコンエッグが出来たら、再びマーガリンを敷いて、食パンをイン。

 片面だけ少し焦げ目が出来る位に焼く。

 パニーニみたいなヤツ。これも意外といけるんだよね。

 それに先程のベーコンエッグを乗せれば、はい完成。

 お好みで塩と胡椒もどうぞ。

 簡単お手軽独身飯。

 んーいい匂い。

 実に美味そう。


「いただきます」


 パンはサクサク、ベーコンカリカリ、半熟玉子焼きがトロットロ。

 美味いね。これで牛乳が冷たければ文句ないんだけどなー。

 ぬるい牛乳を飲みつつ、チャンネルを入れる。つかない。

 あ、そっか、停電してたんだった。

 それじゃあ、スマホでニュースでも―――


「……あー、充電忘れてた」


 スマホも充電が切れてた。

 マジかよ。なんて日だ!


「ん?ちょっと待て。電気が使えないって、それじゃあネットも使えねーじゃん!」


 ブクマしてる小説たちが俺を待っているのに……。

 はぁ……仕方ないか。もう寝よ。

 もちょもちょと朝食を終わらせ、布団にイン。

 洗い物はとりあえず水につけておく。

 後でちゃんと洗うよ。

 ……アイツへの餌も後でいいか。


「んじゃ、おやすみなさい」


 という訳で、俺は二度寝を開始した。

 つーか、さっきから外、ホントうるさいなぁ……。

 なんなんだよ……。


 ま、それでも寝れるけどね。

 ぐー……。


 ……。



 ……。



 起きた。

 よく寝たなぁ……。

 もっちょりと布団からはいずり出て、時間を確認。


「うわ、もう昼じゃん」


 がっちり二度寝、六時間。

 カーテンの隙間から漏れる光は完全に昼のそれだ。


「眩しい……」


 社畜に太陽の光は毒だ。

 体内のマイナスエネルギー(主に上司のせい)が浄化される。

 駄目だ。 浄化しちゃ駄目なんだ。

 そのエネルギーは、いつの日か、上司をザマァする日まで、とっておくの。

 シャーとカーテンを開ける。


「……ん?」


 俺は首を傾げた。

 俺の部屋はボロアパートの四階だ。

 ちょっと位は、街並みを俯瞰して見る事が出来るんだけど……。


「何、この光景?」


 最初に目に飛び込んできたのは、謎の巨木だった。

 樹高何十メートルもあるだろう巨大な木。

 ファンタジーでよく見る世界樹みたいな感じの奴だ。

 それがコンクリートや家屋を突き破って至る所から生えている。


 更に地面も舗装されてる部分と、むき出しの地面とがつぎはぎの様に重なり合っている。

 まるで色の違うジグソーパズルを無理やりはめ込んでいるかのようだ。


 そしてあっちこっちで煙が上がり、サイレンがひっきりなしに鳴り響いている。

 車のクラクションの音もずっと聞こえてくる。

 それに混じって聞こえてくる悲鳴と、人間とは思えない叫び声。


 「アンギャアアアア!」とか、「GIGAAAAAA」って感じの声。

 そう、まるでモンスターの様な……。

 いや、まさかねぇ。

 そんなのいる訳―――。


「あ、オークだ」


 でっぷりとした体に豚の頭。

 ファンタジーで定番の魔物。

 オークが道路を歩いていた。

 いやぁ、朝から、あもう昼か。元気がいいですねぇ。


「って、いやいやいや!」


 おかしいって!

 流石におかしい!

 オーク!?ナンデオーク!?

 

 もう一度、オークらしき生き物を見る。

 リアルだ。 ……作り物には見えないよなぁ……。

 背中にファスナーらしき物も無い。

 着ぐるみにしては手が込み過ぎてる。

 手に持った巨大な包丁なんてもう人の首でもスパッといけそうな……あ、よく見たら血が付いてらっしゃる。


「…………」


 それにあのオークさん、もう片方の手に何か持っている様な……。

 ポタポタと血が垂れてて、丸くて……うん、ボーリングの玉かなんかですかね。

 きっとそうだよね。

 ちょうど穴の位置に目とか口とかそんな感じのパーツが見えるんだけど、きっと違うよね。見間違いだよね。

 ナイスボートだった。


「うっぷ……おぇぇぇぇ」


 吐いた。

 うん、無理。

 何アレ?

 グロイ。

 めっちゃグロイ。

 確実に規制入るレベルのグロさだった。


 他にもオークやゾンビの様な化け物が徘徊している。

 一足早いハロウィンか何かですかねぇ。

 あほか、まだ5月だってーの。


「まじかぁー……」


 余りにも非現実的な事態に、理解がついてこない。

 でも、たぶんそう言う事らしい。

 世界が変わったのだ。

 モンスターが現れ、人々を襲う世界に。

 理由は分からないが、そう言う事なのだろう。


「夢じゃないよな……?」


 ほっぺをつねる。痛い。

 まるでラノベかオタクの妄想みたいな展開だな、なんて思ってしまった。

 いや、俺もその手の小説はネットでよく読んでるけどさ。

 実際に起こるとは思ってなかった。

 頭が付いて行かないよ。


「ふぅー……」


 テーブルに置きっぱなしにしてあった牛乳パック。

 何でも良いからとにかく何か口に入れたかった。


「んぐ、んぐ……ぷはぁ」


 全部飲んでしまった。 でも少しは頭が働くようになってきた。

 

「……てことは、昨日のアレってもしかして見間違いじゃなかったのか?」


 すこし落ち着いた俺は昨日の事を思い出した。

 帰宅途中でひき殺してしまった常識外れの大きな犬。

 もしかしてあれもモンスターだったのでは?

 

 となれば、少なくとも昨日の時点で世界は変わっていたという事だ。


「それじゃあ、その後に聞こえた“あの声”も?」


 あの犬が消えた後に頭の中に声が響いた。

 思い出せ。

 あの時、あの声は何て言っていた?

 

「確か……最初の討伐を確認、スキルを獲得……とか言ってたような気がする」


 ふと、俺はその可能性を思いつく。

 モンスターが現れた世界。

 そして謎のアナウンス。

 となれば、“アレ”もあるんじゃないか?

 こういう場合のお約束。




「―――ステータス・オープン」


 なんちゃって。





クドウ カズト

レベル1

HP :5/5

MP :1/1

筋力 :3

耐久 :2

敏捷 :1

器用 :1

魔力 :0

対魔力:0

SP :10

JP :10


職業 無し


固有スキル 早熟


スキル 無し



 …………ホントに出たよ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る