雨の幽霊2
『ゆうれいがころんだ』
我が家の庭には、雨が降ると幽霊が現れる。
大きな傘差す小さな幽霊が、ある時空を仰ぎ見て、ぐらりと大きく揺れたと思うとそのまま後ろに倒れてしまった。
パシャンと跳ねた水に驚いて立ち上がると、空から差し込んだ光で幽霊はさっと消えてしまった。地面には水溜りも、転んだ跡も見当たらなかった。
(2022/08/20)
『幽霊の傘』
子供用の黄色い傘が処分価格で売っていたので、衝動的に買ってしまった。
雨が降ると現れる我が家の庭の幽霊の、可愛い長靴には大きな黒い傘より似合うだろうし、この傘ならばバランスを崩して転ぶということもないだろう。
どうやって贈ればいいのかは分からないけれど、私は弾んだ心で家路についた。
(2022/08/22)
『幽霊に贈り物』
我が家の庭に台を作って、その上に傘を置いてみた。
雨の日に現れた幽霊は、いつも通り黒い大きな傘にすっぽり覆われていたけれど、それがぐぐっと斜めになる。
置いてある傘を観察するように、大きな傘は大きく左右に揺れていたけれど、その日は結局、傘が新しいものに変わったりすることはなかった。
(2022/08/23)
『幽霊と新しい傘』
思いついて、台の上の傘を開いて置いてみる。
雨が降り出して現れた幽霊は、前回と同じようにしばらく斜めになっていたけれど、やがて傘がぽとんと落ちた。
あっと思う間もなく黒い傘は消え、幽霊は小さな黄色い傘を差して立っていた。
紺色のスカートと、白い足がはっきり見える。女の子だったのか。
(2022/08/25)
『ゆうれいがわらった』
雨は中々止まず、庭の幽霊の姿もずっと見えていた。
黄色い傘がくるくる回され、黄色の長靴がぴょんと跳ねる。体が軽くなったらしい。
もう一度ぴょんと跳ねた幽霊が、くるくると回り始めた。
初めてこちらを向いた幽霊に息をのむ。
お下げ髪のパッチリ目をした女の子が、とても楽しそうに笑っていた。
(2022/08/26)
『雨の幽霊』
雨が降ると、庭先に子供の幽霊が現れる。黄色い長靴と黄色い傘、お下げ髪の可愛らしい女の子。水たまりを跳ねるように歩き、時折くるりと回って、庭に咲いた花の前でしゃがみ込んでツンツンとつつく。
幽霊は最近、雨に溶けるようになってきた。
幽霊がいつまでここにいてくれるのかは、誰も知らない。
(2022/08/27)
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