俺は崩壊した世界で未来にあがく~クリーチャー特殊殲滅部隊サーバント更新停止中

トクメイ太郎

第1話プロローグ



 『俺は崩壊した世界で未来にあがく』

 


 西暦二千百年。

 ここは別の世界線の日本。

 日本政府は世界の実権を欧米諸国連合から奪おうと裏で暗躍していた。

 政府は四国に実験都市イビアを設立する。そこには沢山の一般市民も住んでおり、毎日研究に明け暮れる研究者達もいた。

 日本政府は、前段階として、実験都市イビアの中心部に位置する通称イビアタワーでクリーチャーを作成して、管理していた。その事実を知っているのは政府の人間と一部の研究者だけだった。

 

 そんなある日、イビアタワーで火災事故が起こる。

 火災の原因は新型のクリーチャー実験の失敗だった。

 その実験の失敗で、イビアタワーの中で管理されていたクリーチャー達は暴走し、イビアは瞬く間に火の海になった。

 

 そして、クリーチャーじんぞうせいぶつ達は各々日本各地の定住したい場所に移動する。それに伴い一般の人間は、地下に居住区を作り住み着く。

 政府は、クリーチャーじんぞうせいぶつを災害認定し、クリーチャーじんぞうせいぶつが住み着いた場所を危険地域に認定する。

 残っていた少ない資料を基に、政府は神器という唯一クリーチャーにダメージを与えられる武器を作る。その次に、政府はクリーチャーじんぞうせいぶつ特殊殲滅せんめつ部隊サーバントを結成する。


 サーバント。それは、政府が無作為に選別した男女がクリーチャーと戦闘し、危険地域の解除を目指すというとてつもなくアバウトな感じだった。だが、一部では、サーバントは英雄と言われていた。何故無差別に選ばれるのか。それは、日本は、人口が少なく戦う人間を人選している余裕すらなかったためだ。

 

 そして、時東良平ときとうりょへいも政府に選ばれた人間の一人だった。

「うちにも政府から手紙が来たんだ。これで俺も立派なサーバントだぜ」

「良平がサーバントかよ。政府はかなり切羽詰まってるんだろうな。心配するわ」

「俺は選ばれし者なんだ。選ばれてないお前とは違うんだよ」

「俺は選ばれたくないし、英雄にもなりたくないよ」

 友達は良平を心配した。


 時東良平ときとうりょうへい。年齢18才。高校を卒業し、スーパーで働いている。目は細く、性格はやんちゃでヤンキー気質だ。髪色は黒で髪型は男性ぽさのあるベリーショートで、少し刈り上げていて、口元にピアスをつけている青年。

「お前さ。サーバントになるならもう少し見た目おとなしくした方がいいと思うんだ。他のサーバントに喧嘩売られても知らないよ」

「その時は殴って黙らせるまでだ!」

 良平は気合十分だった。

 

 そして、当日。

 

 良平は地下鉄に乗って関東から関西に行き、地下居住区の上にある地上世界の綿貫市に向かう。綿貫市は唯一関西でクリーチャーに侵略されていなかった為、関西支部が設置されていた。


「しかし地上は空気がいいな。地下と違って重たくないぜ」

 荷物を持った良平は一度空気を吸って深呼吸し、関西支部のあるビルに向かう。

 良平がビルに着くと、小柄な少女が関西支部の入り口の前に立って一人で少し大きな声で叫んでいた。


「ここが関西支部か。クリ―チャーじんぞうせいぶつ待ってろや。私が全部倒したるからな」

 叫んでいる少女を無視して関西支部に良平が入ろうとした時だった。


「あんた私の事変な目でみたやろ」

「見てません」

 良平はこれ以上絡まれたくなかったので、適当なことを言って早歩きで逃げようとすると、少女も早歩きして追いかけて来た。


「絶対嘘やわ。私の事チラ見してたやん」

「じゃあそういう事にしておくよ。じゃあな」

 良平は一言言い残して、逃げるように研修室に向かうと、少女は喋り続けて追いかけてきた。

「ちょっとまちぃや。あんたもサーバントに選ばれたんやろ。私も。私も。一緒に研修室行こうや」

「結構です。そういう事なんで」

 良平は少女を無視して一人で研修室に向かう。


 結局良平は、その少女から逃げることができず、研修室で少女は良平の横に座り、勝手に自己紹介を始める。

「私は加川梓かがわあずさ。年齢は18で今年高校を卒業して、大学に行ってたんやけど、サーバントに選ばれて、最初はびっくりしたんやけど、関西支部の前来たらテンション上がってあんな調子やったんや。よろしくな」

「お、おう。俺は時東良平。よろしく」

「じゃあ良平って呼ぶわ」

「軽いなお前」

「よく言われるわ」

 こうして二人は自己紹介をした。


 良平の梓に対してのぱっと見ただけの印象は、小柄でアクセサリーなどもつけておらず、服も白のTシャツに黒のジーンズで、どちらかというと地味なイメージだが、喋るとうるさい奴だなという印象だった。

 研修室には30人ほど集まった。


 研修が始まると、政府の人間が講師に立った。


 研修が終わり、良平達は政府の人間からとんでもないことを聞く。

 

 それは、無作為に選ばれて招集されていた他の人たちも理解できなかった。

「それでは、今から神器に適合するための試練を行います。適合しなかった者は感情を失い、一生施設送りで実験体になってもらいます」

「なんだと」

「嘘」

「帰りたい」

「逃げたい」


 皆が発する中、良平と梓は身を構えてかかってこいという感じだった。

「お前は逃げたいと思わないのか?」

「なんで逃げるんや。もしかして良平びびってるんか?」


「そんなことないぞ。梓こそビビってるんじゃないのか」

「私は全然怖くない」

 二人がそんな事を言い争っていると、梓の番が来る。


「頑張ってこいよ」

「わかってるって」

 少し緊張しながら梓は試練を行う部屋に移動する。


「無事成功したわ」

 梓は疲れた表情を見せず笑顔で帰って来る。

 そして良平の番になる。


「がんばりや」

「おう」

 

 良平は、梓に応援してもらい試練の部屋に入る。


 そこには、剣の形を模していて禍々しいオーラを放つメカメカしい形をしたなにかが置いてあった。

「それではその神器に触れて、適合するか試してください」

「これですか?」

 良平は、試練の部屋にいた政府の人に聞き返し、理解してその何かを触った。


 すると、良平の体にビンビンと電撃が伝わり、死にそうになるぐらいの痛さに見舞われて良平は死ぬかと思った。

「こんなに耐えたとか梓化け物かよ。俺も頑張らないと」

 結果的に、ぎりぎりのラインで良平は合格した。

 そして、梓と良平は無事合格して、関西地区の瓦礫市に住み着いたクリーチャー討伐の任務に就くのだった。

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