第31話 オーランドへ帰還

祖父のお墓参りを済ませたラースたちは、オーランドの街に戻ってきていた。

明日からは、病院業務にも復帰することとなる。


「おかえり。二人とも」


 辺境伯の屋敷に戻ると、バーロンが出迎えてくれる。


「ただいま戻りました」

「二人とも、夕食はまだだろう? 用意できているぞ」


 ラースたち3人は夕食の席につく。


「それにしても、龍の治療を終えてくるとはな。龍の治療は難しいのか?」


 バーロンが尋ねてきた。


「そうですね。何しろ前例が少ないので、龍の体はまだ解明されていないことが多いんです」


 龍はほとんど人里には現れない。

なので、龍を治療できる獣医はベルベット亡き今、ラースくらいしか居ないだろう。


「そうなんだな。そんな治療を任されるとは流石だな」

「でも、私は今回の龍の治療についてまとめた論文を公表するつもりです」

「いいのか? 貴重な情報なんだろう?」

「情報を独占せずに、公表することで新たな発見があり、それが5年後10年後の医学の発展につながるのです」


 祖父でもきっと同じことをしただろう。


「そうか。ラースさんがそう言うならそうした方が良さそうだな」


 バーロン辺境伯も納得したように頷いた。


「聞くところによると、獣医師会の会長にもなったんだって? これからは王都に行くことも増えるんじゃないか?」


 医師会の会議などは、基本的に王都で行われるのだ。


「医師会の会議は緊急の場合を除いたら半年に一度とかなので、そこまで大変なわけではないと思います」

「それにしても、ついに現れたって感じだな。ベルベットの意志を継ぐ者が」


 バーロンはとても嬉しそうだった。


「父上はなんだか嬉しそうですね」


 クレインがバーロンの表情を見て言った。


「いやぁ、ラースさんを見ていると昔のベルベットを思い出してな。なんだか懐かしい気持ちになるのだよ」

「それは、嬉しいですね」


 祖父に似ていると言われて悪い気はしない。


「二人とも今日は疲れただろう。ゆっくり休むといい。詳しいことはまた改めて聞かせてくれ」


 外はもう真っ暗の時間帯である。

長旅による疲労もある程度は溜まっていた。


「では、お言葉に甘えて私はお先に休ませてもらいます」


 食事を終えると、ラースは自室に戻った。



 ♢



 翌日、ラースは病院へと出勤した。

代わりに来ていた先生は昨日、王都に戻ったようだ。

一言挨拶しておきたかったのだが。


「おはようございます」

「あ、院長おかえりなさい!」

「ラース院長、お待ちしていましたよ」


 看護師のアリアと事務長のイリスが出迎えてくれる。


「遅くなってすみません。私の居ない間、大丈夫でしたか?」

「ええ、それはもう代わりの先生がよくやってくれました」

「それなら、よかったです。イリスさん、これを受付に置いてもらっていいですか?」


 ラースは2枚の額縁を渡した。

一枚はドラグス王国の獣医師免許、もう一枚はローラン王家お墨付きの証である。


「これは院長、とんでもないお土産をお持ちになられましたね」

「え、ドラグスの獣医師免許!?」


 二人とも驚きに表情を変えていた。

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