第36話 イリスとこの先

 私、エリム

今日も授業を終えて家に帰ってきた。


「ただいま」


「おかえりなさいませ。ご主人様」


 メイドのイリスが迎えてくれる。


「今日もお疲れ様です。ご飯を食べるのもお風呂に入るのでもいつでも大丈夫ですよ」


 イリスはいつでも準備万端だ。


「お腹空いたから...じゃあご飯食べる〜」


 私はお腹が空いていたので先にご飯を食べることにした。


「かしこまりました」


 イリスは先にご飯を用意してくれた。


「いただきま〜す」


「はい。いただきます」


 2人で今日のご飯を食べる。

イリスが作ってくれる料理は私の舌に合っていてとても美味しい。


「あ〜美味しかった。じゃあお風呂、入ってくるね」


「はい」


 食べ終わったし次は入浴だ。

体を流し、綺麗になりながら心を安らがせよう。


「私〜エリム〜」


 適当に考えたオリジナル曲を歌いながら体を洗っている。

この泡を流す瞬間が気持ちいい。


「ご主人様」


 イリスの声が聞こえてくる。

多分、ドア越しで話しかけているのだろう。


「何?」


 要件が分からないので聞いてみる。


「一緒に入っても良いですか?」


 イリスは私と一緒に入浴したがっている。

イリスはこうやって私との入浴を要求してくる日があるが、私はイリスと入れるのは嬉しいので正直なところ、いつでも大歓迎だ。


「いいよ〜」


 軽く私は答える。

こうやって軽く答えた方がイリスも入りやすいだろうから。


「ありがとうございます。ご主人様」


 足音から分かるが、イリスは一旦更衣室に行きその後に浴室に入ってくる。


「先に体洗います」


 イリスは私と同じく、入浴前には体を洗う。

イリスは早く私と入りたいからか、やや速く体を洗っている。


「そんなに慌てなくても私は逃げないよ」


 慌てがちなイリスに向けて今は体を速く洗う必要がないので私はそう伝える。


「そうですか...では」


 伝わったからかイリスはスピードをやや速くから普通のスピードになり、体を洗う。


「失礼します」


 そして流したイリスは私浴槽に入る。


「いいよ〜」


 頭を下げてから律儀にイリスは入浴してくる。


「やっぱりお風呂はあったまるね」


「そうですね。私も入浴は好きです」


 入浴していると、どこか心が落ち着いてくる。


「少し...寄り添っても良いでしょうか?」


 イリスは私の近くにいたいからか、少し恥ずかしそうにしながら私に聞いてきた。


「良いよ」


 イリスは隣にいるとより可愛く見えてくるので歓迎した。


「ありがとうございます...では」


 ゆっくりとイリスは私に寄り添ってきた。

顔が少し近い気がするが、気にしないでおこう。


「ご主人様、いつもありがとうございます」


「何さ改まって〜」


 唐突にイリスはお礼を言ってきたので何故だか気になってしまった。


「いえ...」


 イリスは一旦横を向き、それから再び私の方を向いてくる。


「ご主人様、そろそろ進路を決める頃合いですが、どうなさるご予定ですか?」


「あー...そうだね...」


 ここで思い出した。

そろそろ私が進む未来、進路を決めなくては。


「ごめんね。まだ決めてないや。どうしようか迷っちゃってて...私には何が向いているのかな...とかさ?どういったのなら私は続けられる...とかさ?色々考えてるうちに分かんなくなっちゃって...」


 何回か将来、何をしようかとかは考えたことはあったが決まらないままでいた。

でも、最終的には決めなくてはならないのでどこかでハッキリさせないと。


「私はご主人様が進みたい未来、歩みたいこの先はご主人様自身が見つけて決めて欲しいです。私が見つけたメイドの仕事みたいにご主人様に合ったこの先の未来は必ずあると信じています」


「イリス...」


 イリスは私のこの先の未来を信じている。

絶対に見つけよう。


「ありがとうイリス。私、見つけるから」


 寄り添っていたイリスの手を握った。


「ご主人様...私、ご主人様の将来が今から楽しみです。どんなお仕事をするのか...どんな相手と恋人になるのか...」


「イリスも...将来どうなるんだろうね?」


 私のことを気にしてくれているイリスのこの先の未来も気になってしまった。


「私ですか?私は...」


 ここでイリスは一瞬固まり、悩んでしまった。


 が、すぐに。


「私はただ、ご主人様のメイドであり続けたいのが本望です。それさえできればそれ以上、何も必要ありません。ただ...」


「ただ?」


 途中までイリスはしっかり喋っていたが、途中から小声になってしまっている。


「欲を言ってしまえばメイドとしてご主人様のお側にいたいですが...それ以上にご主人様のお側にいたいと考えたりして...えっと...その...」


 恥ずかしそうに焦りながらイリスは話している。


 一緒に暮らしているのにそれ以上にお側にいたいとはなんだろうか?


「...やはり、なんでもないです」


「そっか」


「ですが...近い内にしっかりと私の気持ちをご主人様に全て打ち明けます。それまでに待っていてくれますか?」


 先程、言おうとしていたことをイリスは近い内に打ち明けてくれるみたいだ。

分かるなら私はいつでも良い。


「いいよ。イリス、待ってるね!」


「ありがとうございます...やはりご主人様はご主人様らしいですね」


「どういうことさ〜」


「そのまんまの意味ですよ」


「あぁそういえばさ?今日...」


 その後も私とイリスは入浴しながら楽しく雑談した。

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