第35話 ジェシカと将来

 私、エリム

今日もフロンティア学園の教室に入る。


「おはよう。ジェシカ」


「あぁおはよう」


 ジェシカは何やら深刻そうな顔をしていた。


「どうかしたの?」


 気になった私はジェシカに聞いてみた。


「将来のことよ。そろそろ真剣に考えないといけないから...」


「そっか...もうそんな時期か」


 ジェシカは進路で悩んでいた。


 私も前いた世界にいた頃は進路、どうしようか悩んだものだ。

なので、懐かしく見える。


「ジェシカは将来、何がしたいの?」


「色々考えたけど私は私に合ってて働けそうなところを...」


 しかし、ここでジェシカの声が小さくなってしまう。

悩んでいるからだろうか?


「ジェシカ、何かしたいこととかあるんじゃないの?その感じ...なんだかちょっと怪しいよ」


 あまりジェシカを疑いたくはないが、明らかにいつものジェシカとは様子が違うのでつい疑ってしまい、聞いてしまった。


「...エリムにはお見通しだったって訳ね」


 当たっていた。


「誰にも言わないからさ。私には言えるかな?言いたくなかったらそれでも別に良いけど...ジェシカの進路だからね」


「言うわ。お昼休み、お弁当を食べながら2人でゆっくりと話しましょう」


「ありがとう」


 どうやらこの流れなら聞けそうだ。


 もし、ジェシカに夢があるのなら応援したいし、私ができることならジェシカの進路の力になってあげたい。


 そしてお昼休みになった。


「さぁ、食べながら話しましょう」


「そうだね」


 ジェシカは相変わらずの大盛り弁当だが、何度も見たせいか見慣れたので触れないでおく。


「で、ジェシカは将来何がしたいの?何になりたいの?」


 私は率直にジェシカの希望を聞く。


「えぇ...私ね?舞台女優になりたいのよ」


「そうだったんだ?良い夢持ってるね!」


 そういえばジェシカは昔、小さな劇団にいたみたいな話をしていたのを思い出した。


 文化祭の日にクラスで「百合な魔法少女」の劇をやったのだが、ジェシカの演技力はかなり凄く、見ている人たちが感動するぐらいの名演技を披露していた。


 私はその日にジェシカが演じるリゼルタと恋に落ちるミレム役を演じていたのだが、私自身、ミレムに重なって本当に恋に落ちてしまいそうになるぐらいに。


「ありがとう...でもね?プロの世界に入ったとして見ている人に良いお芝居が見せられるかどうかが不安なのよ...」


「あー...プロになるってなってくるとそういった心配も出てくるよね」


 ジェシカの気持ちもよく分かる。

プロの世界に入るとなるとより多くの観客を前にして芝居をしなければならなくなるので、そこでジェシカが悩むのも納得する。


「卒業してからでも良いし、またお芝居始めてみたら?ジェシカってさ...私から舞台に上がると全くの別人になったみたいにお芝居するからきっと見ている皆を圧倒させるぐらいの名演技を披露することができると思うんだ。文化祭の日、ジェシカなのかリゼルタなのか分からなくなるぐらいだったし」


 私から見たジェシカの感想を述べてみた。

ジェシカの将来の支えになれると良いが。


「そう?そんなに私のお芝居褒めてもらうとなんだかその気になってくるわね...」


 ジェシカが今日の朝のジェシカよりも表情が明るくなった。


 これは効果があったかもしれない。


「私、またお芝居挑戦してみるわ!」


「その意気だよ!」


 ジェシカが再び、お芝居をする気になってくれた。


 ジェシカは自分の将来と向き合い、自分なりの選択肢を選んだのだ。

私は全力で応援しよう。


「エリムは?将来、どうするの?」


「あ」


 そういう私は将来のこと、全然考えてなかった。

普通に商店街の店とかで働くつもりだったが、どうしよう?


「ねぇエリム...貴方も将来お芝居、やってみない?」


「私も?」


 言われてみればお芝居の道に進むのもありかもしれない。


 文化祭の日に舞台に上がり、私ではない別の誰かになって演技を披露する。

発声、台詞の掛け合い等、どれもかなり楽しかった。


「ありかも...」


「でしょ?エリムは容姿も綺麗だし、学園祭での演技上手だったからきっと舞台女優として大成功すると思うわ!見ている人、全員感動しちゃうんじゃないかしら?」


「そんなに!?」


 私自身、舞台女優に向いてるなんて考えたことがなかった。

だが、演技が上手いジェシカからそう言われてしまうと段々と興味が湧いてくる。


「そうよ!きっとエリムは将来、最高の舞台女優になるに違いないわ!」


「褒めすぎだって...」


 そんなに褒められると、どんどんその気になってしまう。

けれどまた舞台の上に上がってみたい気はある。


 だけれど。


「ごめん。もうちょっと考えさせて」


「良いわよ。エリムはエリム、よく選ぶと良いわ。この先の未来、エリムがどんな姿なのか...今から気になって仕方がないわ」


 ジェシカの言う通り、私の将来の姿は今じゃまだ分からないのでどんな姿になるのかが、今からでも気になる。


「ありがとう。将来のジェシカも見てみたいな」


 私もこの先のジェシカがどんな姿になるのか?

今から楽しみだ。


「ありがとう。お互い、楽しみね」


 ジェシカは私に寄り添ってきた。


「ねぇ...今日授業終わったら空いてる?」


「空いてるけど...どうかしたの?」


「2人でできるお芝居するの...どうかな?台本は丁度良いのあるわよ」


 ジェシカから授業が終わった後、一緒にお芝居を誘ってきた。

楽しそうだ。


「良いね!」


「じゃあ後で。頑張るわよ!」


 そして授業が終わった後、使えそうな場所を取って私とジェシカはお芝居をした。

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