第24話 マガラの国王ユウラ

【前話までのあらすじ】


王族のザイドの紹介で王宮の海運大臣から乗船認可証3枚の発行許可がでたギガウ、アシリア、そしてスレイ。しかしそのとき認可室の扉が開き、水脈管理大臣ダレルと秘書ミレクが入ってきた。ギガウは水脈管理を乱した罪で捕らえられてしまった。

◇◇◇


【本編】


 広間には水脈管理大臣ダレル、秘書ミレク、そして玉座にはユウラ王が鎮座していた。


 「チャカス族の男よ、王の御前だ。控えよ」


 『王』という言葉にギガウは玉座から視線を離すと、周りを見渡した。


 「チャカス族の男よ、名は何と申すか?」


 ギガウは質問の声に視線を戻す。やはり玉座に座るこの10代前半の女の子が国王なのだと理解した。


 「ふ.. お前も私を見下すか。何度、その眼をした奴の首をはねたことか。私がこのマガラ国王のユウラだ」


 「女王?」


 「その言い方は気に食わぬ。本来であれば貴様は2度死んでいるぞ。『王』と呼ぶのだ!」


 「 ....?」


 ギガウは戸惑っていた。その様子を見て水脈管理大臣ダレルが話を進める。


 「男よ。貴様の名は何と言うのだ?」


 「ギガウです..」


 「ギガウ、お前はクタ地区の井戸へ勝手に水脈を繋いだであろう。とぼけても無駄だぞ。私の秘書ミレクもお前と同じチャカス族の血を引いているのだからな」


 ギガウが秘書ミレクに感じていた違和感の理由がわかった。


 「ギガウよ。この国ではコップ一杯の水でさえ地区を跨げば死罪となるのだ」


 「しかし、俺は地下にある別水脈を井戸につないだだけです」


 「愚か者! このラック砂漠にあるものは、石ころひとつでもマガラ国の王である私のものだ。私の許可なくば、それは盗みと同じだ」


 この理不尽な物言いにギガウは憤っていた。


 「しかしだ。私は実に慈悲深い王だ。お前が私の命令を達成できたならば、その罪を許してやろう」


 ギガウは常に冷静に物事を考えられる男だった。自分の前に直々に王が姿を現したこと、そして殺してしまっても別に困らない旅人に交換条件を持ちかけたこと、その2つにギガウはこれは命令という『懇願』なのだと理解した。つまり、このマガラはどうあってもチャカス族の自分にしてほしいことがあるのだとギガウは即座に読み取ったのだ。


 「お前への命令—」「お待ちください」


 ギガウはユウラ王の言葉を遮った。


 「まだ、私はそれをするとは返事をしておりません。ですから、まだ命令を聞く必要はありません」


 「な、なんだと貴様! 私が慈悲深く死罪にならぬ方法を提案してやっているのに」


 「それだけでは足りません。私の無罪放免、クタ地区への水脈の使用許可、そしてキャサリン行きの乗船許可を3人分。これを約束していただけたならば、私はきっとこの国の危機の助けとなるでしょう」


 ギガウはわざわざ『国の危機』を言葉にだし、自分の必要性を強調した。


 「き、危機だと! 危機になど直面しておらぬわ!」


 「そうですか。それは私の早とちりでした。申し訳ございません」


 そのやり取りに秘書のミレクがふき出しそうになった。


 「では、改めまして、王様、このささやかな望みをお約束していただければ、私はご命令に従います」


 「先程から聞いていれば、貴様、王に対しての不遜な態度、許し難い。貴様などいなくとも秘書のミレクがいれば事足りるわ! 貴様を吊るし首にしてやる」


 水脈管理大臣ダレルは王への忠誠心が厚く、ギガウの物言いに激高した。


 「発言をお許しください、ダレル様。わたくしの力では無理でございます。このギガウがこの地に来たのは千載一遇の好機と思ってください」


 「ミ、ミレク..」


 ダレルは、いつもは控えめな秘書ミレクが玉座を前に発言したことに驚いていた。



 「やめよ! わかった。 認めよう。貴様の言う通りだ。今、このマガラ国は危機的状況にある。お前の望みを約束しよう。だから力を貸してくれ」



 ダレルもミレクも驚きを隠せなかった。齢13にて王位を譲り受け、その威厳を守り、国を動かすことだけに信念を曲げなかったユウラ王が、今、ただの旅人に頭を下げ頼んだのだ。


 ギガウはユウラ王が国の為なら、自分の頭を下げることが出来る誇り高い人物だと思った。


 「わかりました、ユウラ王。何なりとお申し付けください。私は何をすればよろしいのでしょうか」


 「ギガウよ、お前の言葉ありがたく思う。お前のチャカス族の力をもって、この国の命である魔獣ラークマーズの墓場を探してほしいのだ」


 『魔獣ラークマーズの墓場』それはギガウにとっても意外な探し物であった。

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