第8話






 次の日


 リリスは高級娼館へと売られた。


 ここに来る男性は貴族が主で、彼等は美貌と教養を兼ね備えている娼婦と芸術や音楽、機知に富んだ会話を楽しむ為に来るのだ。


 元公爵令嬢なので淑女としての教養と礼儀は付いているものだと思い、やって来た紳士はリリスを指名するのだが、打てば響くような会話は出来ないときた。


 一人、二人、三人──・・・


 次第に彼女を指名する客は減っていったので、娼館の女将はリリスのランクを落として一日に何人もの客の相手をさせる事にした。


 ソープ嬢時代に培ったテクを駆使してそれなりに稼いでいるとはいえ、一日に何人もの客の相手をするのはきついものがある。


 それどころか、客を迎える為のドレスや化粧品を買う為に娼館に借金をするものだから、更に借金が増えてしまうという負のスパイラルに陥ってしまっているのだ。


「サタナス様に愛される為だけに頑張って来たのに・・・どこで間違ってしまったのかな~?」


 借金を返済する為に身体を酷使してしまった事で、遂にリリスは病に倒れてしまった。




 リリスは共同墓地に葬られたのだが、彼女に手を合わせる者は誰もいない──・・・。








 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






「今日は寒いから・・・何にしようか?」


「だったら、クリームシチューが食べたい」


「いいわね。おじさん、ジャガイモ、ニンジン。玉ねぎを下さいな」


「あいよ」



 リリスが性病で死んだ事を知らない、吸血鬼の脅威から世界を救った若い夫婦は、今だけは戦いの場から離れて穏やかな一時を過ごしていた。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

悪役令嬢は所詮悪役令嬢 白雪の雫 @fkdrm909

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ