威少女回鬼録
アヌビス兄さん
その探偵は怪異を恐怖させる
廃村となったとある田舎、大手企業がそこに巨大なショッピングモールを建てようと計画したのだが、いざ工事をはじめようとすると、重機が突然動かなくなったり、燃えるハズのない資材が炎上したり、作業員達に事故や病気が蔓延した。
そんなよくある話。
それは、廃村で亡くなった村人たちの呪いだとまことしやかに噂され、計画が頓挫しかけていた。次々と仕事を降りたいと下請け企業からの申し出が続き、今までそれらを重く捉えていなかったその大企業の上層部は大金を支払い、藁にも縋る想いで霊能力者を雇った。
すると翌日には失神した霊能力者の姿が見つかった。
それらの責任を押し付けれる形でプロジェクトを任されている専務はとあるルートから一人の探偵を紹介され、その人物に依頼する事とした。
その人物は霊障荒事専門の探偵だという。
どんな問題でも請負着手さえしてくれれば必ず解決してくれると言う。
コンタクトを取ったその人物はその依頼を快く請負、たった一人で廃村跡へと向かった。すっぽりと頭まで被った動物の耳付きのフード、高価そうなブーツは一歩進むごとに味のある音を鳴らしていた。廃村跡と言えど想像より荒れ果てているわけでもなく、気持ちのいい風、草木の匂い、ピクニックでもいくように持参したおにぎりを食べる。
そんな少年とも少女ともとれるその人物はある所で足を止めた。
「君が元凶かな?」
見た先には、着物を来た二十代程の男が睨み付けている。恐らくは人ではない男、そしてその男は口を開くとこう言った。
「出ていけ。ここは悲しい魂が眠る場所だ。荒らしてはならん!」
その言葉を聞いて、その人物は瞳孔を開きながら、嬉しそうに嗤った。男は人外、されどちゃんとした礼節を持った警告をしたハズだった。
それに対してその人物は自分の仕事を簡潔に述べる。
「あのさ、ここさ。でっかいリオンモール建てるんだって? 知ってるよね? 服屋とか雑貨屋とか食事処とか、多分映画館もこの広さなら作るだろうね。だからさ、この邪魔な廃村跡ぶっ壊させてよ! で、ここにそのでっかいリオンモール建てたい人達は君が邪魔だからボクにどうにかして欲しいって頼まれたの。別に恨みはないけどさ。消えてよ」
今までやってきた霊能力者達でもこんな非礼な事は言わなかった。
それ故にその人物の言葉に男性は顔を歪める。
「よもや言葉も通じんとは、人間。そこまで落ちぶれたか? 少し痛い目を見てもらうとしよう! ここは二百年の人々の想いが残っているのだ!」
男の姿がオオカミのような獣の姿と変わる。この姿を見せれば大概の人間は恐れ慄くハズだが、そんな姿を見てその人物はわくわくしたような、狂気的な表情でその様子を眺めていた。
「二百年? そんなのどーでもいいじゃん! リオンモールの方が楽しいしさぁ! くだらない昔の事を考えるより、今じゃん! 今を生きようよ! あっ、もう死んでるのか! それとも元々化け物なの?」
獣の姿となった男をその人物は吹っ飛ばした。それに獣の姿になった男が驚く。そして、少し怯えたような表情で言った。
「お前はなんだ! 私はここの土地神、もし私を殺すような事があれば」
「知らないから、土地神殺したら、言う事聞く別の奴をここに置けばいーじゃん! 違う? もうリオングループからしたら、君邪魔なんよ? 古い神の出番はもうおしまい」
その人物に瘴気が集まる。
その様子を見て土地神は呟く。
「お前はなんだ?」
「ボクかい?
絶乃がそう言うと、その土地神もろとも廃村を荒野に変えた。リオンモールを作るにあたってこの地を更地に変えたのは絶乃のサービス。そして、それから三年経もたずして、リオンのショッピングモールは聳え建つ事になる。
消滅させてしまった土地神代わりに、絶乃が無理やりこの地に連れてきて封印した化物を地盤として、そこは今もにぎわっていた。
長い歴史の中で忘れ去れた鬼と関わりの深い家。
御剣六家。
その中でも破門された一つの家。
鬼を喰らった御剣。
御剣絶乃が請け負う、
同じ世界で起きている異世界のように狂った物語。
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