メッセージの謎3
昼食を食べると、私達は「クローバー」に戻った。
「あら、またいらしたのね」
私達を見ると、綾美さんはそう言って笑った。しかし、その笑顔はどこかぎこちなかった。困惑したような表情で、側にある机に置いたスマホを見ている。
「どうかなさいましたか?」
私は気になって質問した。
「それがね……」
綾美さんは、頬に手を当てて話し始めた。
綾美さんは、以前は頻繁にお孫さんとスマホの簡易メッセージのアプリでやり取りしていたそうだ。しかし、ここ半年はお孫さんの仕事が忙しく、あまり連絡を取っていなかった。それが、二週間くらい前からお孫さんからこまめにメッセージが届くようになったらしい。内容は、綾美さんの体を気遣うものや仕事の愚痴など、よくあるものだったが、綾美さんはとても喜んだ。
しかし今日お孫さんが来た時に、メッセージの内容について話したところ、そんなメッセージは送っていないと言われてしまった。ここ二週間程、お孫さんは一度もメッセージを送っていないそうだ。
お孫さんの奥さんもメッセージを送っていないらしい。では、あのメッセージの数々を送って来たのは誰なのか。綾美さんは、それで考え込んでしまったらしい。
「お孫さんの名を騙ってメッセージを送るような人物に心当たりは?」
「無いわ。お金を要求されたりとかも無かったし、詐欺では無いと思うんだけど」
「そうですか……」
涼太君は、しばらく考えた後、ぽつりと呟いた。
「……誰が送ったか、目星は付くと思うんだけど……」
「え?」
綾美さんが顔を上げた。
「メッセージを送って来たのは、お孫さんの名を騙っても高橋さんに気付かれないくらいお孫さんの事を知っている人間で、同時に高橋さんのアカウントを知っている人間という事になります。……高橋さんのアカウントを知っている方の人数はどれくらいですか?」
「少ないわ。息子夫婦と孫夫婦と三島さんだけよ……まさか」
「多分、三島さんがメッセージを送っていたんでしょう。息子さん夫婦とは……連絡を取っていないと三島さんから聞きましたし、お孫さん夫婦が嘘を吐く理由もなさそうですからね」
「確かに三島さんには孫の事を色々話したけど……どうして孫の名を騙ったのかしら」
高橋さんが首を傾げる。
「自分がメッセージを送るより、お孫さんがメッセージを送った方が高橋さんが喜ぶと思ったんでしょう。……三島さんは、高橋さんが寂しい思いをしないか気に掛けているようでしたし」
「そう……三島さんが……」
綾美さんが、目を伏せた。
「改めて、三島さんにお礼を言わないといけないわね。あの人、もうすぐこの施設を辞めるのよ」
「そうなんですか?」
「ええ、理由は聞いていないけど。寂しくなるわ」
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