身も心も蕩けて1つになる!あたしの本気100%

あれれ? そういえばあたし、アリアにこんなに親切にしてるのにアリアの事ピアノ奏者だと言うことは知ってるけど、それ以外全く知らないや。


 アリアってこれだけ愛されてるのにそもそもナニしてる人なんだろう?




 


 そんなに広くはないヌードバーの客席、その客席の隅にそれはあった。


 一見してそれが、ピアノだとは思わなかったが、あたしはアリアに手を引かれて座らされた。


普通のグランドピアノに若干劣る縦型のアップライトピアノ。


  ピアノがドーン! とその存在感を誇示していようと壁際に置物のように置いてあったとしてもピアノはピアノに変わりない。


 もちろん元の世界でもこういったピアノは少しだけ演奏したことはあるけど、当時はちょっと触れた程度だったからその性能がどの程度なのかはわからない。


 あたしは少しドキドキしながら鍵盤に指を這わせて弦を震わせる。


 存在感抜群のグランドピアノには劣るが凄くいい音色を響かせてくれる。


 でも、本気をだしたら直ぐに弦が切れてしまうのは目に見えている。

 

 だからあたしは本気にならないように注意しながら演奏する。


 鍵盤の上で指先を踊らせると、その指先に合わせて寸分の狂いもなかった。


 もしかしたらと、あたしは楽曲の中から音符が多いことで有名な即興曲を演奏する。


 このエーデル島にきて夢の大舞台で演奏し、これで最期!もう演奏できなくても、いい。 と満足したはずなのにこうしてピアノに触れることができあたしは欲が出てしまう。


 白と黒の鍵盤をフルに使い演奏。 即興曲を引き終わるとあたしは周りが見えなくなっていた。


 本気を出さないようにと心がけたはずがタガが外れてしまっていた。

 

 ピアノと一つになるような感覚。 


 あたし自身が楽器となって音を奏でているのでは?      と思うほど我を忘れてあたしは鍵盤の上で指先を踊らせていた。


 即興曲から頭の中にあるイメージした、メロディに移行。


 どのくらいあたしはピアノの前に座り演奏していたんだろう? 気がつけば体の芯が熱くなり完全に身を委ねていた。


 本気の本気、本気百パーセントになってることに自分でも気付く。



 もっと! もっと……。

 あたしは求める。


 あたしの思いに応えてくれるピアノに応じるように!


 熱くなった身体が快楽を求めるように……。


思考がピアノと一つになり身も心も蕩けていく。






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