第2話 ヒナの写真 謎の数字

 ヒナが口ずさむ。

 陽翔はるとのことを思い出しながら。


 ♪北千住駅の~プラットホーム、銀色の改札、思い出話と~ 想い出ふかし腰掛けたベンチで僕らは何も見えない未来を誓い合った ~~


 あいつは今沖縄にいる。私が行けと言って追い出したんだ。言わなきゃよかった。陽翔なら一緒にいてくれただろう。


 日本のTVやインターネット系が使えなくなったのが本当に不便。外国のは聞けるけど、日本の音楽配信とか聞けないんだ。


 ***


 事の発端を話すよ。

 あれは去年の10月くらいだったか、陽翔はるとと私のスマホの写真を見ていたんだ。

 私の昔の写真を見せていたんだよ。


 9歳の頃の家族旅行の写真を見てた時なの。

 ある写真に数字があるのを陽翔が見つけたの。


 - 22318 -


「何これ? 日付? 22年?」

 陽翔が訊いてきたんだけど、私もそれが何だかわからなかった。


「えー違う。私小学生だからもっと前だもん」


 写真はよく覚えてないけど、どこかの海岸で撮った巨大なコンクリートの壁。

 とにかく超巨大な壁なのね。


 まあ、最初はたいして気にはしなかった。


 次に、また陽翔がスクロールして写真を流し見していくと、また数字があったの。

 今度は中学生の時に家族で行った山登りの写真。紅葉が最高だった!

 うちの家族は仲が良かったんだね。陽翔とも行きたいと思ったけど、今は行けるのかな?

 ちなみに数字は


 - 63 -


 なんだろうね全く、とその時は思ったよ。

 そして三枚目が見つかったの。大学生の時に友達と九州に旅行に行った時の。


 - 86 -


 その場所の説明をした時に、陽翔が言ったの。

「お前が行った所って災害ばっかじゃん?」


「へ、そう? 日本は多いからじゃない?」


 陽翔は自分スマホで災害の詳細を調べながら、私の写真のデータも調べてくれた。


「えっとさ、この九州の場所さ、お前が行ったちょうど1年後くらいに水害に遭っているよ。7月だからさ」


「ふーん。早く行って良かったかな」


それから山の写真を調べた。


「ほら、この山も。写真撮ってたぶん1年後だよ、噴火しちゃった」

「こわ。まじなの?」


 写真のプロパティを調べて陽翔の顔が急に青ざめてきた。


「ヒナ! 全く同じ日だ。ちょうど365日後だ。時間もほぼ同じ」


「え? ほんとに? 偶然でしょ」


 陽翔は最初の写真を調べ始めた。声が震えていた。


「ヒナ、お前この壁の写真、撮ったの2010年3月11日だな。時間は14時46分だ」


「え……」


「やばい。やばいぞ。全部ジャスト1年前だ」


私はよく思い出してみた。

最初の写真は確かに東北だ。田老っていう地区の津波対策の壁だ。

2枚目の山は御嶽山だ。

3枚目は熊本の川だ。

私の3枚の写真はどれも災害発生のちょうど1年前に撮られている。


じゃあ数字は何?


陽翔がついに気づいた。


「被害者の数だ!」


ヒナと陽翔はそれから2時間、調べたり考えたり話し込んだ。


夕方には疲れて、外に出て陽翔と別れた。


こんな事があるんだろうか?


 ♪どんな~未来が~こちらを覗いてるかな~ 


歌おうとしたけど、悲しくて歌えなかった……

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