LAST GIRL

🌳三杉令

第1話 誰もいない東京

 私、不破ふわヒナって言います。

 23歳の普通のそう、ごく普通の女の子です。

 信じてください。普通なんです……


 訳あって、少し前から東京に住んでます。

 一人で……

 今、上野のあたりを散歩しています。

 散歩にはいいところですね。


 誰もいません。だーれもいません。

 車も通りません。自転車も通りません。

 どの店もあいていません。

 どの建物にも人っ子一人いません。

 当たり前です。

 日本(本州)には今私しかいませんから。

 とーっても静かなんです。


 あ、でも鳥はいますよ。

 スズメとかハトとかカラスとか。

 あと、たまにネコとか見ますね。


 空が青いです。

 東京の空ってこんなにきれいでしたっけ?

 清々しくて、とっても気持ちはいいです。

 人はいないけどね……


 他の人達はどうしたのかって?

 あのー、みんな

 私を置いて…… 薄情者たちめ。


 でも残っている人もいますよ。

 沖縄にはまだいっぱいいます。

 北海道の上の方にもいますね。北の方かな?


 見てくださいよ、このスマホの写真……

 おっと、1と6ばかり。

 偶然だけど面白いよ。

 『1,661,116』→

 『1,662,822』→

 『1,658,620』→ …… 


 ヒナが示したスマホには、1年前に東京で映した自撮り写真が表示されている。

 なぜか写真の下に数字が表示されている。

 まるでカウンターのように減っている。


 この現象は今まで、不破ヒナのスマホの一部の写真でしか発見されたことが無い。

 世界で初めての超常現象であった。

 しかも彼女が所持している時だけ数値が変化するのである。 


 私、これ勝手にPVって呼んでるんだけど、もちろん違うの。

 何の数だと思う?


 実はね……


 だいたい一ヶ月後にね……


 この辺で人の数なの。

 

 日本中なのよ、多分。


 まだ残り160万人もいるよ。日本の人は大半がもう逃げたけど、韓国と北朝鮮の人がぐずぐずしてるの。早く逃げてって言っているのに。


 このPVが減らないと私は日本から逃げることができないんです。

 PVが減るのは私がこのスマホを持って現場(今回は東京)にいる時だけなんで。

 

「だから、あなただけは東京に残ってください」


 先月、偉い人に言われた言葉がまだ耳から離れないよ。私の責任じゃないのに……

 でもしょうがないか。

 私がここに残らないと数字が減らない

 =亡くなる人が減らないんだもんね。


 みんなは私が何の話をしているのか、

 なぜこうなったか分からないよね。

 これから順を追って話しますね。

 どうせ暇だし。


 あ、そうだ! 

 そろそろタワマンに戻らなくっちゃ。


 8時からアメリカと定例電話会議があるんだ。

 いつもの総理大臣と……、

 あ、ずるいよね! 

 国のトップなのに早々と米国に逃げてさ。

 -今日は米国の大統領も出るって言ってた。

 ちゃんと通訳いるんだろうね?


 どうせまた一ヶ月後のXデーの話でしょ。

 わたしゃわからんって。


 終わったらまた、ここに散歩に来よーっと。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る