アカオニ・インテリジェンス

プロローグ

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　通告

　ファイルナンバー七〇

　当時間遅延式救難艇ナンバー……一〇二六五

【要救助者】――大喜納（おおきな）モモ。モンゴロイド。男性。二七歳。配偶者なし

【現職】――北フェルミバブル探査船団デカヤマト所属第九九八防衛艦隊旗艦防護艦スゴイズミ生体中枢命令官（オーダーマン）

【要救助者バイタル】――意識レベル……グラスゴー・コーマ・スケール一五。呼吸……一九回／分。血圧……一三三／八二ミリメートルマーキュリー。脈拍……六八回／分。尿量……ハルン九七八ミリリットルパーデイ

【時間遅延式救難艇外経過日数】（地球標準時経過日数）――四二六万一〇八日

【時間遅延式救難艇内経過日数】（遅延開始経過日数）――三五日

　注意、長期間の漂流となっています。酸素、食料、飲料水の枯渇の危険あり。さらに長時間に渡る漂流が見込まれる場合、人体の低代謝状態への移行をお勧めします。

【現在位置】――観測不可

　注意、外郭観測センサー群は救難艇外時間において三二八万五七三八日前に停止。基幹コントローラー全九九ユニットの内一～九九が機能していません。リペアナノマシンフォームによる応急修復を実行します。

　……実行失敗。

【姿勢制御スラスタ】――一号～八号まで認識不可

　部分的または全損している可能性があります。注意、周回軌道進入、地表着陸時に安全な速度まで減速できません。リペアナノマシンフォームによる応急修復を実行します。

　……実行失敗。

【救難ビーコン】――発振停止中

　注意、ビーコン停止中は当救難艇の発見が遅れる可能性があります。ビーコンの再起動を実行中

　……実行失敗。

　注意、ビーコン停止中は当救難艇の発見が遅れる可能性があります。ビーコンの再起動を実行中

　…………実行失敗。

【リペアナノマシンフォーム】――残量ゼロ

　注意、現在、外郭破損修復に対応できません。注意、大気圏再突入時の高圧・高温の減殺に対応できません。注意、地表落着・衝突時の衝撃緩和補助ができません。注意、地表落着後の短期拠点能力を維持できません。

【内郭バッテリー残量】――三八パーセント

　時間遅延装置、正常作動中。救難艇内時間において残り一四日間稼働できます。注意、長期間の漂流となっています。すでに救難艇内時間において三五日経過。さらに長時間に渡る漂流が見込まれる場合、消費電力量減退のため、人体の低代謝状態への移行をお勧めします。

【酸素残量】――二三パーセント。循環空気再生量――毎時一グラム未満

　注意、フィルターが劣化しています。ユニットの交換をお勧めします。注意、循環空気再生量が低下しています。貯蓄再生水を使用して酸素の増量ができます。その際、飲料水の残量にご注意ください。

【食料・飲料水残量】――三五パーセント。藻類・し尿再生変換効率――四一パーセント

　注意、フィルターが劣化しています。ユニットの交換をお勧めします。注意、バイオフォームグミの生成が不完全です。風味付加機能、食感調整機能、嗜好性余剰栄養調整機能を停止中。現在、基礎栄養素均整型グミの生成のみ可能。

【医薬品残量】――九六パーセント。現在、あらゆる疾病に対処可能

　注意、推定使用量未満です。閉所での長期間の滞留は精神疾患の原因となります。抗不安剤の定期投薬をお勧めします。注意、推定使用量未満です。閉所での長期間の滞留は筋萎縮の原因となります。ナノマシン投与による筋繊維電位的微細運動措置をお勧めします。

【精神的緊張緩和装置】――停止中

　地球やコロニーの実録、映画、アニメーション、様々な映像と音声を網膜投影により再生できます。エスニック、クラシック、ジャズ、オールド・ロック、ポップス、カオシック、シンセン・ロック、様々な楽曲を再生できます。文芸、歴史、政治、エンターテインメント、アート、コミックス、様々な書籍を表示できます。脳神経系電位操作により自動的情調変調ができます。

【内郭収容武装】――携行型対消滅弾回転式短銃ヤバ×一、滑腔式可変銃身汎用長銃エグ×一、展開型荊棘付治安維持用殴打器オニ×一。携行型対消滅弾×四八発、対有機生命体質量弾×四八〇発、対有機生命体炸裂弾×二三〇発、対気体生命体極光弾×九六発、長期滞空照明弾×二発、高高度到達型信号弾×一二発、瞬発式重力特異点生成荊棘×一二本。

【緊急用装甲宇宙服バオリ】――待機中

　高真空空間に落着した際のスペース・イマーション・スーツです。少量の携行食が搭載、極短期間この宇宙服のみによる生存が可能です。また、簡易低代謝モードにより、最長一〇〇〇年、仮死状態を維持できます。ただし簡易機能のため、蘇生後は適切な治療が必要であると予想されます。

　ファイルナンバー七〇

　以上

　注意。落着後の時間遅延装置停止は、適切な手順を踏みましょう。

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　通告

　ファイルナンバー七二

　当時間遅延式救難艇ナンバー……一〇二六五

【要救助者】――大喜納モモ。モンゴロイド。男性。二七歳。配偶者なし

【現職】――北フェルミバブル探査船団デカヤマト所属第九九八防衛艦隊旗艦防護艦スゴイズミ生体中枢命令官（オーダーマン）

【要救助者バイタル】――意識レベル……グラスゴー・コーマ・スケール一五。呼吸……一八回／分。血圧……一二九／七七ミリメートルマーキュリー。脈拍……七一回／分。尿量……ハルン九五一ミリリットルパーデイ。

【時間遅延式救難艇外経過日数】（地球標準時経過日数）――四三八万九八日

【時間遅延式救難艇内経過日数】（遅延開始経過日数）――三六日

　注意、長期間の漂流となっています。酸素、食料、飲料水の枯渇の危険あり。さらに長時間に渡る漂流が見込まれる場合、人体の低代謝状態への移行をお勧めします。

【現在位置】――観測不可

　注意、外郭観測センサー群は救難艇外時間において三四〇万五七二八日前に停止。基幹コントローラー内ユニット――

※※【注意】※※

　通告中止

　一〇秒前に内郭センサーにて振動を検知

　外郭観測センサー群、停止中。再起動……実行不可

　注意、外郭解放を認知できません。時間遅延装置停止手順に反した強制解放の兆候あり。

　注意、ただちに外部へ警告します。外郭観測センサー群、停止中。再起動……実行不可。

　バオリ装着要請受諾。装着確認

　三秒前に内郭センサーにて、更なる振動を検知

※※【注

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