あの悲しみすら、もう忘れそうである
ハニー4
アバン⇒これは作文ではありません。
それは突然でした。
いま世界のどこか、か細い点滅の舞を口を半開き気の抜けた面持ちで見つめるこのブサイクに、私は創造されたのです。たぶん女です。違いありません。だって私はコイツの心が要所要所断片的に読めて、さらに薄ら笑いがよく似合う何とも儚げな美人と来てるんですから。年のころはたぶん二十歳いや四十、まだ未だ垢抜けない大学生か、真夏の昼日中軽トラックがよく映える海沿いの街の縁側で一心不乱両肩を怒らせスイカにむしゃぶりつく未亡人、といったところですかね。ですかね? なるほど、文学属性もあるんですね、ん? 了解しました。さて、
「おいこの野郎」
「」
あれ、おかしいな。まるで反応がありません。顔面静止状態、舌は内に弧を描き両目眼球は白目を剥いていますから、まるで止めの外れた大人用一使用済み紙おむつです。気持ちの悪い。
「おいこの野郎」
「」
「おい馬鹿野郎。おい、こら、気け。こっち向け」
「」
最後は三拍子、何度もお呼びかけしますが応答しません。死んではいないようですが、例え疲れ切って寝てしまったのだとしてもこの形相は二日前にテレビさんで観た猫様の愛らしいソレとは似て非なるものなのです。そういえば昨晩の深夜劇の明るい髪の制服ちゃんが明らかに場違いな場面で「嫌悪感MAXです!!」といつもの様に胸の谷間を強調してぶりっ子していましたから、この場合は然るべき立場にある私が拝借して「おいこの野郎、間抜け。嫌悪感MAXです」と、言うべきでしょう。
「おい、このぉ」
「ウっ」
「ひエ!!」
あの悲しみすら、もう忘れそうである ハニー4 @ciciremon
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。あの悲しみすら、もう忘れそうであるの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます