とある王女の秘め事
黒猫B
第1話
大罪人ガゼルの釈放が今日、城で執り行われた。
二人の衛兵に囲まれ、
城門に向かって中庭の中をのっそりと歩くその様子は、折り重なった歳月の重さを物語っていた。
ガゼルが第一王女殺しの罪で、王国の城に幽閉されたのは、実に50年前のこと。
勇敢で、心優しく、義に厚いガゼルが、なぜ第一王女を殺したのか。
国中にひろがった疑問も、長き時の中で風化していった。
彼の名を覚えている者も、もう少なくなった。
それは、良いことか悪いことか。
そして、その数少ない一人が、私だった。
城門にたどり着いた、ガゼル一行の前に、私は立ちはだかる。
心地よい風が舞う、温かな陽だまりの中で、私とガゼルは見つめ合った。
「お久しぶりです、ガゼル。50年ぶりね」
「相変わらずお美しく。お久しぶりです、第二王女・サラ様」
「今は…女王よ」
「大変失礼いたしました、女王陛下」
ガゼルは顔を伏せ、視線をそらしながら、私の横を通り過ぎていった。
衛兵たちはガゼルの出所を確認すると、身を翻し、城に戻っていく。
第一王女殺し…姉殺しのガゼルに、私は言わなくてはならない言葉がある。
衛兵たちが遠ざかったのを確認すると、私はガゼルの背を追って、老いた足を走らせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます