Cry over
ぽんせい
第1話 リサとリリィ
おびただしい警告文と共に警報音が鳴り響く。
「また失敗だぁー」
リサは髪をかき上げながら呟く。
リサはアンドロイドを開発する研究員として働いている。
「なんでこんなにうまく進まないんだろ・・・」
そう言いながら時計を見ると、もう0時を過ぎていた。廊下へ向かい、窓の外をみると星がきらめいていた。
「うぅ、もう帰らないと」
リサはぽてぽてと歩き出した。もう夜遅かったからか、列車には人がほとんどいなかった。
「はぁ」
リサはため息を吐きながら今にも泣きだしそうな顔で外を見つめる。
「アトラスカ居住区前ー、アトラスカ居住区前ー」
列車内にアナウンスが響く。
リサは列車を出て家に向かった。
アトラスカ04-702 これがリサの家だ。
市民カードをタッチし、マンションの中に入る。
エレベーターでも市民カードをタッチして7階へ向かう。
「エレベーターでもタッチしなくてもいいじゃん、毎回めんどいなぁ」
と愚痴をこぼしてリサは自分の部屋へと帰った。
ふぅ、とため息を漏らしたリサの瞳には涙が浮かんでいた。
「なんでいっつも失敗しちゃうんだろ・・・」
リサはそのまま眠りについた。
リサが起きた時にはもうすっかり日が昇っていた。今日は運よく休みの日だったので、リサはゆっくりと朝の支度をした。
「誰か一緒に話してくれないかな・・・」
リサは気弱な性格と研究熱心さが相まって友達といえる存在がいなかった。
「もし私と同じような性格の人がいたら話しやすいんだけどなぁ」
リサはふっと顔を上げて
「そうだよ、私をもう一人作ればいいじゃん!」
リサはそのまま机に向かい、ノートに計画を書き込んだ
「AIに自分の情報を入れて私と同じように振る舞わせよう」
そう言ってパソコンにも電源をつけて、アンドロイドの知能プログラムを開いた。
「時間はかかるけど、テンプレを使わないで一から作ろうかな」
リサは新規のプログラムを開き
「あ、そっか。プロジェクト名をつけないと」
アンドロイドは普段試作回数で番号を振っていたが、自分の分身を作ろうとしているのだから、話は変わってくる
「リサだとなんだか変なかんじだしなぁ」
そう言って1,2分考えた後に
「よし!リリィだ!!」
新規プログラムにリリィと名付け、立ち上げた。
「とりあえず基本情報を入れないとねー」
その日は日が暮れるまでリリィに情報を詰め込んだ。
「んーっと、大体の情報は入れれたかな。後はリリィと話してAIに学習させれば立派な話し相手になるはず」
「せっかくアンドロイドのプログラムで作ったんだし、体のパーツもあった方がいいよね。明日買いに行かないとね」
次の日、リサは旧型のアンドロイドのボディを買ってきた。
「最近のボディってあんなに高いんだ・・・」
旧型のボディは新型に比べて人間らしさが少なく、メカっぽい見た目をしている。
「リリィには申し訳ないけど、これで我慢してもらうかー」
そしてリサは、旧型のボディにリリィのプログラムを流し込んだ。
「hello、 new program confirmation・・・ プロジェクトリリィを実行します」
リリィが目覚めた。
「こ、こんにちはリリィ」
リサはおどおどしながら挨拶をした。
「こんにちは、リサさん」
リリィはしっかりと受け答えをした。
リリィにはリサの基本情報しか入れてないからか、おどおどしている様子はない。
リサはリリィをまじまじと見ながら
「リリィ、今の気分はどう?」
と聞いた
「はい、良好です。しかし、瞳の洗浄機能に問題があります。洗浄機能が動作しません。」
リサはリリィの目をよく見ながら
「うーん、私だと直せそうもないし瞳の洗浄機能はほとんど使わないから大丈夫かな」
リリィはどこか悲しげに
「了解しました。」
と言うと、部屋の中をワクワクした様子で見渡している。
リサは
「これからこの世界のこと沢山教えてあげるから、一緒にお話しようね」
と優しく微笑みながらリリィに言った。
リサとリリィの出会い。これが儚く、尊い人とアンドロイドの物語の始まりだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます