教会の上で

指定された時間に指定された公園の栗の木の傍のベンチに待機しているオリ。


「これ、 凄いですね、 望遠鏡、 でしたっけ?」


遥か彼方の教会の屋上から望遠鏡で監視するチェンとメイズ。


「メイズ殿下、 知らないふりをしなくても良いですよ

此方は貴方の国が望遠鏡を作っている事を承知しています」

「ははは・・・まぁ一般には出回ってない物ですから誘拐犯も知らないでしょう

内通者が居なければ」

「内通者が居れば動きが有りますから

寧ろ内通者が居てくれた方が助かるんですけどね

まぁ、 ここに私と貴方が居るって事は陛下しか知らない事ですから

この場合内通者は陛下になるかもですね」

「本気で有りそうな気もしますよ、 ルイ陛下は誘拐された娘には死んでほしいでしょう?」

「まぁそうだとは思いますが教会は破門はされたくないでしょうから

娘を取り戻すまでは下手な事はしないですよ、 問題はカボンとカボン家臣団ですかね

家臣団にとってシーは本当に死んでほしいでしょうし」

「シーは嫌われているのですか?」

「カボンは今でこそ平民に施しをする人物ですが

彼があぁなったのはシーが養女になってからです

昔はもっとガツガツと利益を貪るタイプでしたよ

商会の吸収合併、 親類の政略結婚、 移民受け入れによる労働力の確保

えげつない事もしばしば」

「あのシーとか言う娘は何者なんですか?」

「さぁ・・・先代の雇っていた執事の孫娘とか言っていましたが、 どうせ私生児でしょう」

「私生児? 教会は不貞を許さない筈では? 破門の可能性も」

「証拠が無いんじゃあ何も言えませんよ、 ただ、 過去を見るに

執事の孫娘なんて引き取りそうにないなと思いますが・・・!!」


チェンがばがっ、と動いた。


「誰か来ました」

「!!」


オリの傍に男がやって来た、 御者の様な恰好をしている。


「迎えか!? どうする移動するぞ!!」

「・・・・・ここが王都で一番高い場所です

ここから見えない場合は他で待機している連中からの旗信号で状況を見るしかない・・・」


旗信号とは複数の旗を使っての通信方法である。


「~~~~~っ!!」


やきもきしながらも見続けるメイズ。

オリは公園から出て馬車に乗った、 そして王都を外れ郊外まで向かっていった。


「郊外か・・・遠いが開けているから教会ここから見れるな・・・」

「あれは・・・廃屋か? あ、 ペンチで開けて入って行った」


オリが廃屋に入った。


「・・・あの廃屋の中に居るのか?」

「すみません殿下、 見張りをしていてください、 旗信号に入ります」


そう言うとチェンは旗を振り始めた。


「・・・・・」


旗信号の暗号コードは国ごとで違うので内容を判別する事が出来ない。

まぁ、 今はそれよりも見張りの方が先決なのだが・・・


「・・・・・ん? あれは・・・」


娼婦だろうか、 派手な格好の女と紳士風の男が廃屋に入って行った。


「まさかアレが誘拐犯な訳無いよな・・・」


暫くすると女と紳士が外に出て行った。


「・・・・・」

「殿下、 今廃屋が監視できる場所に人を配置しました」

「チェン団長、 少し宜しいでしょうか」

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