3つの疑問

マーカス達が帰った後、 リーゼの部屋に戻り溜息を吐くメイズとリーゼ。


「全くあの人にも困ったもんだ」

「その通りですね、 殿下」

「所でシー子爵令嬢って誰だ? 私は聞いた事が無いんだが・・・」

「カボン子爵家の令状ですよ、 元平民だとか何とか・・・詳しい事は分かりませんが

カボン子爵が養子に迎え入れたとか」

「カボン子爵ね、 聞いた事がある様な無い様な・・・・・

重要な立ち位置の人なのか?」

「いえ? 特には・・・でも平民には受けの良い方ですよ

救貧院や炊き出しにも積極的に力を入れていますし」

「意外だな、 そういう事はもっと上位の貴族がやるかと思っていたが・・・

しかし周囲よりも娘の教育に力を入れるべきだろうに

王太子を婚約者から寝取るとか論外だろう」

「確かに言えていますが・・・まぁ今回の婚約破棄でカボン子爵もタダでは済まないでしょうね」

「・・・・・それは如何だろうか」


メイズがぽつりと呟いた。


「はい?」

「今回の件には色々不審な点がある」

「不審な点? まぁ貴族が護衛無しで出歩く時点でおかしいですが・・・」

「そこだ、 疑問点①何故国王は王太子だけで出歩かせたのか?」

「見捨てられたから放置されているのでは?」

「私もそれは考えた、 しかしさっきの王子を見ていると滅茶苦茶だ

放置していたら不味い事をしでかすかもしれない」

「・・・確かに、 不貞をする様な男ですからね」

「私ならばこっそり護衛を付けておくだろう、 しかしそれをしなかった」

「・・・付いていたけども子爵令嬢が攫われたならば放置で良いというのは?

陛下からすれば子爵令嬢は大事な婚約を破棄させたのだから寧ろ死んでほしいでしょう」

「可能性は有る、 次に疑問②何故王太子を攫わなかったのか?

子爵令嬢よりも王太子の方が人質として価値が有るだろう」

「・・・やはり国王陛下の策略で子爵令嬢を殺したいからでは?」

「王太子をボコボコにする必要はあるのか?」

「まぁ怪我する程度ならばと殴る事は有るでしょう

若しくはこっそりと付いて来た護衛に気が付いて王太子をスルーしたとか」

「護衛がこっそり付いて来ている連中を襲いたいと思うか?

何かしらの作為があったと見える」

「なるほど・・・」

「そして疑問③何故暗号を使ったのか」

「・・・やはり王が関与しているのでは? 王族なら暗号も分かるでしょう

国王名義で命令を暗号を経由して伝えてこれこれこうです、 とする事も可能です」

「それだ」


ビシと指を立てるメイズ。


「はい? どれです?」

「暗号を使った、 となれば当然今までの恨みから言って

婚約を台無しにした子爵令嬢を憎んだ国王が最重要容疑者になるのは当然だ」

「そうでしょうね」

「じゃあ暗号を使わなければ良い

予め裏に手を回して置けばこうして私の様な者に感づかれる事も無い」

「あぁ、 確かに・・・では王以外の誰が犯人なのでしょうか?」

「可能性が一番高いのは国王陛下、 次点で王太子

対抗で王国の重鎮かその関係者でしょうか?」

「重鎮とその関係者は分かりますよ

私と王太子の婚約破棄でてんやわんやでしたから

しかし王太子が誘拐とは?」

「狂言誘拐による身代金をせしめる為、 もしくは子爵令嬢に飽きて殺して

他の女性とお付き合い、 とかですかね」

「何方も有りそうですね、 まぁ暗号の解読待ちでしょう」

「暗号解読にはどれほど時間がかかります?」

「明日には終わるかと、 まぁ私達には関係無いですよ」


リーゼはそう考えていたがそういう単純な話ではなくなってしまったのだった。

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