第4話 お持ち帰りしてみた
「これがまさか、異界化の核? って、人に見えるけど」
俺はその地面に横たわる少女っぽいものを少し距離を置いて眺めていた。
異界化は、大元の異界化の核から連鎖して周囲に伝播していくことが多い。そして影響力の大きな核ほど、その周囲がより異界化するので判別しやすいのだ。
その地面に横たわる少女の周囲はまさにそんな感じだった。
少女の地面に触れている手のひら。その指の隙間からは、にょろにょろと草のような物が伸びている。それが途中でぷつんと千切れて、伸びた部分の草が二股にわかれると、それが足のように動き出す。
そして何体もの草が、てくてくとそこら辺を歩いているのだ。
その歩く草が二体出会うと、互いを取り込むようにして少し大きな一体へと変化していく。
「基本は核を壊せば異界化はおさまるんだけど。カレンがサンプルサンプルうるさいしな……」
俺がどうしたものかと核としか思えない少女を見ているうちにも、どんどん大きくなっていった歩く草が、ついにゴブリンへと変化する。
「なんで草からゴブリンになるんだ? これもカレンなら理由、わかるのかね? 記述紋、解放」
俺はとりあえず途中まで描いていた記述紋を完成させる。
「実行」
空中に浮かぶ記述紋を『ペン』で一突きすると、現れた炎で、変化したてのゴブリンたちを焼き払う。
ついでにゴブリンになる前の歩く草も軽く焼き払っておく。
「とりあえず、カレンのとこまで持ってくか……」
俺は気が進まないなーと思いながら、『ノート』に記述紋を描き描きしつつ、地面に横たわる少女に近づく。
まるで接近する俺を拒絶するように、踏み込んだ俺の足の周りに草が勢い良く生えると、茎が足に絡み付こうと迫る。
「実行」
妨害を見越していた俺が描いたのは、「盾」の魔導紋章に、「浮遊」の魔導紋章を組み合わせた記述紋、浮遊盾だ。
空中に現れた浮遊盾は、ひとの頭より一回りほど大きな正六角形の半透明の板だった。
それが俺の足元へ移動すると、伸びてきた茎を妨害するように動く。
「さて、こんだけ描けば大丈夫かな。連続実行」
浮遊盾が、何枚も重なって現れる。
それが空中に広がると、地面に横たわる少女の体の下へと滑り込んでいく。
浮遊盾により、少女の体が持ち上がる。
「ふーん。やっぱり、地面に接しているのが条件、みたいだ」
少女の体が浮かび上がったところでその周囲で生じていた草の異常な成長が止まったように見える。
「行きますか」
俺は浮遊盾に少女を運ばせてカレン達のもとへと戻ろうと歩きだすのだった。
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