横断禁止と狙われの少女
「僕は赤信号が見えないんですよ。」
九条さんが怪訝な顔をしてこちらを見てくる。まあ、そうだよな。しかし、これ以外に言いようが無いのだから仕方がない。嘘をつくという選択肢もあったが、バレたらやばそうだし。僕は重ねて
「そこであなたを利用して、信号のタイミングを計ろうとしてたから、青信号だって分かってなかったんです。」
と畳みかける。疑問を挟ませたり、話を終わらせたりはしない。
「どういうこと?」
よし。興味は釣れた。これは、、まあ『体質』に関する質問だろう。
「文字通りですよ。より正確に言うなら、信号の光が見えないっていう感じです。なんで、あの2つのピクトグラムは見えてます。」
予想通りの問いに用意していた答えを返す。
「・・・?」
混乱しているっぽい。
「ピクト、、、?」
といったきり考え込んでしまった。いや、そこかい。しかし、余裕をもって、改めて見てみると整った顔をしている。考え込む姿も何やら可愛げがあるように思えてきた。無論構えているピストルが無ければ、だが。手持無沙汰のそんな現実逃避をしていたら、彼女は再び口を開こうとしていた。反応の準備をする。
「・・えっと、つまり。君は赤色が見えないのですか。」
英語の例文みたい。なんか怖くもなくなってきたな。
「いえ、信号の光だけがピンポイントで見えない感じです。ほかの赤や緑は見えます。」
再び思考し始める彼女だったが、それは数秒後に
「まあいっか。」
と、アホっぽく中断された。一応人生で初めて誰かに話したのだが、なんというか意外とあっけなく信じられた。のか?だが、話は終わらせない。とりあえず時間を稼がねば。ピストルは依然こちらを向いているのだ。
「質問いいですか。」
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