第2話 あなたに死んでもらっては困ります
通称、氷の女王。
佐藤愛花。
俺は話し掛けようとしてきた佐藤をチラ見してから授業を受けた。
それから観察していたが放課後まで何も起こらなかった。
そして俺は放課後になってから勉強の為に使う教科書を鞄にぞんざいにぶち込んでからそのまま帰宅しようとした時。
「あの」
そう声がした。
俺は「?」を浮かべて周りを見渡す。
するとその声の主は佐藤だった事に気が付いた。
飴玉の様な声。
俺は驚愕しながら佐藤をまじまじと見る。
「どうした?」
「いえ...あ、その」
「...???」
残っているクラスメイト達が俺達に注目する。
驚愕している感じだ。
俺はその視線を見るのも鬱陶しくて佐藤を見る。
それから「すまないけど何か言うなら早めに頼めるか」と言葉を発した。
すると佐藤は周りを見渡しながら頷いて鞄を持つ。
「すいません。じゃあ一緒に帰りながら」
「...ぁえ!?」
何だって?
教室が凍り付く。
それから唖然としながらざわざわとなる。
それはそうだ。
氷の女王。
誰にも懐かない女王がそう言うのが有り得ない。
「どうしました?」
「...いや。...すまない。ちょっと驚愕だっただけだ。良いのか」
「え?何がですか?」
「俺と一緒に帰ると...噂になるぞ」
「...あ。...ですが...教室で話す事が出来ないので」
そんな言葉をヒソヒソと小さく話す佐藤。
俺はその言葉に更に驚きながら居ると佐藤が前を歩いて行った。
それから帰宅する方向に歩いて行く。
下駄箱の方面だ。
俺はそんな姿に頬を掻きながら1メートルぐらい離れて歩く。
そうしてから俺は佐藤が下駄箱から靴を取り出して履いたのを確認してから数秒後に靴を履いた。
それからきょとんとしている佐藤を見ながら歩き出す。
それは勿論、1メートルぐらい間隔を空けてからだ。
すると校門から出て数メートルでいきなり氷の女王は足を止めて言葉を発した。
「横田くん」
「は、はい?」
「私ですね。その...」
「ああ」
「...隣人同士ですよね」
「そうだな。だけど2年近くでこんなに近いのは初めてだ」
「そうですね。それで横田くん」
(何だろうか)と思いながら見ていると佐藤は「ちゃんと三食は食べていますか」と聞いてきた。
俺はその言葉に対して(いきなりか?)と思いながらも肩を竦めてから溜息を吐く。
それから顔を上げてから佐藤を見る。
「ああ。食べているが。それがどうした」
という感じでだ。
すると佐藤は真剣な顔で俺を見てくる。
ジッと見てくる。
(な、何だ。キスでもするつもりか)と思っていると真剣な顔のまま告げてきた。
風が吹く。
「それは嘘ですね。昨日から今日の昼間にかけて何も食べてない顔です」
「...それは佐藤は関係無いだろ?」
キスでもするかと思ったらそういう事か。
俺はまたイラっとしながら答える。
それからそのまま前に歩き出しながらポケットに手を突っ込む。
(イヤな事を思い出してしまったな)とそう考えながらだ。
すると佐藤がいきなり俺の鞄を引っ張った。
「駄目ですよ。ちゃんと食べないと」
「何だよ。ちゃんと食べなくてもアンタに関係無いだろう」
「...関係あります」
「...は?どういう関係だよ」
「な、何でも良いでしょう。...決めました」
そう言いながら佐藤は俺を真っ直ぐに見据える。
それから意を決してから顔を上げてくる。
少しだけ頬が赤い。
何を言う気だ。
「一緒に三食を食べて下さい」
「...は!?な、何だよお前!?そんな人間じゃ無いだろ!」
「私は隣人の貴方が孤独死してもらっても困ります。だから一緒にご飯を食べて下さい」
「...な、何でいきなり!?...それに俺は...」
俺はまたイラっとしてからそのまま「いい。俺は1人でご飯を食べたいんだ」とそのまま横をすり抜ける。
それから帰宅をしていると佐藤が俺の袖を握った。
それもか細く、弱弱しく。
俺は「!?」と思いながら佐藤を見る。
「お願いです」
まさかの懇願だった。
それから悲しげな顔をしている。
正直何でそこまでするのか意味が分からない。
だけどここで断って彼女を泣かすのも罪だな。
思いながら俺は盛大に溜息を吐いた。
「分かったよ。何でか分からないけど。食べれば良いんだろう」
「あ...はい!」
佐藤の目に光が戻る。
俺はそんな姿を見ながら考え込む。
オレンジ色の夕日が河川敷と俺達を照らす。
それから考えていたが答えが見つからなかった。
(何故俺なんかとご飯を?そして何故に氷の女王がこんなに)。
そう思いながら少しだけ歩幅が早くなる佐藤を見た。
考えても分からない。
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