第5話

あの日から一ヶ月ほど何事もなく終わった。

最初こそなんであの二人は一緒にいるんだみたいな目で見られたが2週間も経てば誰も気にしなくなった。ある数人を除いて。



数日後休み時間に彼女と話しているといじめっ子Aに話しかけられた。


「ねぇちょっとお前」


多分俺に話しかけているが無視だ。彼女の話に集中する。

彼女はAのことが気になるみたいだけど俺が無視してるのを見たら気にするのをやめた。


「ねぇ」


あまりにしつこいので一言


「今俺は彼女と話してるんだ。とっととどっか行ってくれ」

「な、何よ。話しかけてやったのに」


その時はそれで終わった。


5日後の3時間目のチャイムがなったけれど彼女がいない不安になり探しに行こうとたった瞬間扉が空いた。彼女だ。びしょ濡れで髪から水がポタポタとたれている。すぐに駆け寄ると彼女は


「寒い」

と一言。急いで制服を脱ぎ上に被せる。クラスの前方からクスクスと聞こえた。いじめっ子達だ今すぐ文句を言いに行こうとしたが辞める、彼女が震えていた。彼女と自分の鞄ふたつを持ち教室を出る。教室から先生の声が聞こえたが、無視して帰路に着く。

彼女の家へ行き彼女が風呂に入って来るから待っててと言われたので彼女の部屋の座布団に座って待つ、彼女に何があったのかだいたい想像がつくが彼女が来るのを待つ。


彼女は部屋に入ると同時に

「ありがとう」

とだけ言った。


「何があったの?」

「御手洗に行こうと思って入ったら中からバケツで水をかけられた」


今までそんな直接わかるようにされたことはないと言っていたのに、まさかやってくるとは思わなかった。

「ごめん君を守るって言ったのに」

「そんなことないよ、まさか私もあんなことされるなんて思わなかった」

「震えてるよ大丈夫?」

「大丈夫じゃないかも、まさか直接やられるとは思ってなかったから、ちょっと怖いね」

「不安じゃ無くなるまでここにいてあげる」

「ありがとう」


それから二時間ほど彼女の家で話した。

「そろそろ大丈夫?」

「ねぇ今日家泊まってくれない?」

「え、な、なんで」

「ちょっと1人になりたくないんだ」

「親は?」

「二人とも出張なんだよね」

「わ、わかったけど、床で寝ればいいの?」

「なんでよ、別にベッドで寝ればいいじゃん」

「じゃあ君はどこで寝るのさ」

「一緒に寝ればいいじゃない」

「え、え、へ、ま、まじで?」

「なんかおかしい?」


ほんとにわかっていない顔だ。ここまで無防備なのはどうかとも思ったが。

彼女は本当に怖がっているようなので断る理由もない。


「じゃあ一回風呂はいってくるね」

「わかったすぐ来てね」


俺は念入りにシャワーを浴び彼女の家へ向かう。


彼女は笑って少し話してから寝ようねと言った。また座ると思って座ろうとしたら止められ、ベッドを指さされた。あそこでってことだろう。彼女が先に入り後に俺が続くなるべく近ずき過ぎないようにベッドの端に行くと腕を引っ張られた。

「そんなに端だと落ちちゃうよ?」

そう言われ。

「そうだね」


彼女が手を繋いできた。手は少し震えていたが、落ち着いて来たようだ。話をしていると彼女の声がすぐに聞こえなくなった。代わりに寝息が聞こえる。どうやら疲れていたらしい。すぐに寝てしまった。俺もすぐ眠気が来ておやすみとだけ言って寝てしまった。


朝起きると彼女は隣にいなかった。

階段を降りるとキッチンから物音がした。

扉を開けると、エプロン姿の彼女がいた。


「あ、起きたんだ座っててもうすぐできるから」

「なんだか新婚みたいな雰囲気だね」

「な、何言ってんの」

顔が真っ赤だ。


家へ帰り支度をして彼女の家へ戻る。そして学校へ歩き出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る