本格始動と新年 Ⅵ

北暦290年 

ケプラー日時 12月26日 8:58

第2超巨大コロニー グリーゼ 完全独立部隊アサナトス軍事施設 アルキオネ艦長公室




 昨日の情報過多な1日の所為か、あまり寝た気がしないアストは重い目蓋を擦りながら艦長公室の自動扉を開けようとすると、中から人の気配を感じる。


 サラ副長かな?随分早いな……特に急ぎの予定とかは無かった……と思うが


 昨日はサラ副長とフローレンスの会話を色々聞き逃しているので朝から何かしらやることがあったのかもしれない。


 入る前に一応端末を確認する――サラ副長から怒りの込められた冷やかな連絡等は……当然何も無い。よかった。と胸を撫で下ろす。




「アスト艦長?」

「はい!!」


 不意に後ろから話しかけられ反射的に返事をしてしまった。しかもその声は艦長公室の中にいると思っていたサラ副長の声だ。


「お、おはようございます。サラ副長」

「おはようございます……どうかなさいましたか?」


「いや、てっきり中にいるものかと」


「――?」


 サラ副長は挙動不審なアストに対して首を傾げた以外は表情一つ変えず、自動扉へ手際良く端末のカードキーを読み込ませ開ける。


 そして中では、こちらが入ってくることに気が付いていたのか、見覚えのある黒い制服を着た4人の女性が姿勢を正し待機していた。


 サクラメント・エレクトロニクスの制服――


 彼女達は昨日と同じように一斉に一定の角度でお辞儀とあいさつをする。


「「天音アスト大佐。サラ・ブラウン中佐。おはようございます」」


「これは一体……?」


「昨日お伝えした通り、我々の秘書を務めて頂く4人です」


 完全に聞き逃していた内容だったが「あぁ、そうだったな」と話を合わせる。


 手前の女性から順に自己紹介をしてくれた。


 ゼノビアさん、リュドミラさん、ザヴァリィさん、そして……


「マリー・ジェンナ・ローサルト・タシェ・ドーラ・ボアルネと申します。ジョセフィーヌとお呼び下さい天音アスト様」


 名前長っが!!というか俺よりガタイがいいけど!?


 整った顔立ちだが、明らかに他の彼女達3人とは体格、いや風格が違う、違いすぎる……最早格好良いまである。ダメだ彼女しか目に入らない、他3人の名前が記憶から消えた……


「えっと……ジョセフィーヌさん、以前は軍人だったり?」


「はい、第7艦隊に所属しており、その後サクラメント・エレクトロニクスへ転職致しました」


 ヴェ!?あの第7艦隊!?超精鋭部隊の一員だったのか!?


「な、何故?」


 彼女はその質問に頬を赤らめ、屈強な身体をモジモジさせ顎を引き、上目遣いで答えた。


「小説の……というか天音アスト様のファンで……」


 キャッ!とこちらから視線を逸らし、恥ずかしそうに顔を手で覆う。


「えぇ……」


 こんな人までフローレンスの小説の影響を受けてるのか……一体どんな内容を書いたらこんな人まで寄ってくるんだ??


「すまない。その小説って何て言う――」


宇宙そらの騎士~新たな速度の彼方の君と7人の姫君~です」とまさかのサラ副長が即答する。

 

 なんでサラ副長も知ってるの?


「――彼女に限らず、この4人は宇宙連合軍上がりです。なので秘書兼、ブラックブロッサムのパイロットとしてアルキオネに配属されます。少しブランクがありますので1月末のアルキオネ整備完了までの間は操縦訓練等も行っていただきます」


「そ、そうか。よろしく頼む」


 そういうと美人秘書?4人はビシッと綺麗に敬礼をする。


 なんかイメージしていた秘書じゃないんだよなぁ……

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