本格始動と新年 Ⅴ´

 宇宙海賊CypherサイファーDrive Dollドライヴドールは15機、対して宇宙連合軍は30機。


 そして最後に出てきた自分と相手側の1機を合わせれば16対31。

 

『キャプテン申し訳ねぇ!何機かしくじりやした!』

 仲間が抑えきれず宇宙連合のDrive Dollドライヴドールが3機、正面から向かってくる。


 その戦力差にCypherサイファーのキャプテン、ドレークはニヤリと笑う。


「我々も戦力を割いていてね。護衛の数が少なくて助かるよ」

 

 敵の内2機が合計8門の光子銃砲フォトンブラスターで偏差射撃をしてくる。

 

 ドレークがダブルアサルトと呼ぶ蒼いDrive Dollドライヴドールの増設された4ヶ所のテイルスラスターが唸りを上げ、通常のASSAULTアサルトギアの2倍以上の速度で戦場を駆ける。


 敵の正確な射撃を最小限の動きで躱し、一瞬で3機との間合いを詰める。


 自身の射程圏に入ったドレークは両手左右に装備した2丁の小型小銃で正確に敵の光子銃砲フォトンブラスターを全て撃ち抜く。

 

 散開する前に叩かせてもらおうか……


 ASSAULTアサルトギアを装備した残りの1機が光子刃フォトンブレードを振り抜き接近してくる。


 右手の小型小銃を撃ちつつ、素早く左手の小型小銃を収納し光子刃フォトンブレードを逆手で展開した。


 敵が機体のオート機能によって適切な距離で光子刃フォトンブレードを振り上げる。


「毎度、単調なオート操作だな」


 ドレークは敵の振り上げた腕の手元へ小型小銃の弾丸を撃ち込む。

 敵の機体は手首から先が欠損し、武器の無い右腕をただ振り下ろす。

 振り上げた勢いで保持されていない光子刃フォトンブレードはクルクルと無重力空間を漂うと数秒後にエネルギーが切れた。


 無防備な敵機の左肩を勢いよく蹴り、敵の背を自分の方へ無理やり向けると人質を取るような形で光子刃フォトンブレードの先端をコックピット間近へ近づける。


「ゴーグ、こいつらの通信をジャックしろ」


『了解しやした!――――DDと戦艦への接続完了!お待たせしやした!』


「貴様ら、動くなよ?」人質を助けようと動く2機のDDに忠告する。


『なんだこの通信??まさか宙賊か?』


光子刃フォトンブレードがコックピット前の外部装甲を少しずつ融解していく。


『うっ……』


 ドレークは「積み荷を全て渡せばこいつを解放し戦闘を止めよう。どうだ?」と交渉しつつ周囲の索敵を目視で行うと、彼の右目が遥か遠くのスラスターの光を一瞬だけ捉えた。


「さぁ、どうする――?」

『――構うな!輸送艦を死守せよ』


「その声、マッカートニーか?仲間を簡単に切り捨てるとは……エースパイロットも堕ちたものだな」


『黙れ、低俗な宙賊風情が!』

 

「そうかい……」


 人質を取られ動けず立ち止まっている2機の内、左側の機体の方向へ人質を捕らえたままドレークは押し進む。すると人質のパイロットが『な、何をする!?』と怯えた口調で声を上げた。


「放して|と思ってな」


 そう言いながら敵の目の前まで人質を連れて行くと「ほらよ」と冷めた声でDrive Dollドライヴドールを左脚で蹴り、突き放す。


『くそっ!ふざけ――!!』


 人質だった機体が振り向こうとした瞬間に光子刃フォトンブレードが背部からコックピットを無慈悲に貫く。その光景を敵の目の前で見せつけ、コックピットから飛び出した切っ先をそのまま呆然と見詰める機体へ押し付ける。


 コックピットのみを貫いたことで爆発はせず、動かなくなった2機は寄り添ったまま宇宙空間を漂う。

 その奥から薔薇の家紋が装飾された盾を装備した真新しいDrive Dollドライヴドールが勢いよく接近してくる。


 ドレークはその家紋を睨みつけ「交渉、決裂だろ?」と、その機体を操縦しているであろうディラン・マッカートニーへ問い掛けた。

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