再会と新世代 Ⅹ
アルキオネは当初の作戦から大きく航路を変え、訓練艦のテレテの援護へ向かおうとしたが、想定以上の小型
そんな中、リリア・ソコロフ大尉から
「――解析結果出ます!」
「――
全ての個体を完全消滅すべし。って凄いな、当時はどうやって対処したんだ…………?じゃない!感心している場合か?!
「通報艦パルラス及び、各パイロットへ通達完了」
これで多少戦局がマシになればいいが……
「照合データによりますと、本艦の周囲に存在する80%がこの個体と同一の物と思われます」
だよなぁ……この増え方からして、既に他の艦隊も俺たちと同様に無数の
マシなるには遅過ぎたな……
「自動砲座での対空防御は中止だ!下手に倒すと更に敵が増える」
絶命した個体の鱗から同様の個体が無数に生み出されるのか……戦艦だけだと相当厄介な相手だ。
全体の戦況的に、元々中央にいた可能性が高い……ドレッドノートのお陰で頭数を減らせていたとして、俺らと同様の対処(自動砲座での自衛)をした連中が知らぬ間に
完全消滅か……主砲と誘導ミサイルでどこまで対処できるか……
『天音少尉!聞こえておるかな?――おっといけねぇ今は艦長だったな』
「……ダニエル軍曹!?」
DD格納庫から予想だにしない人物が映像通信をしてきた。
『何を驚いておるんだ?ほれ、新武装の詳細に目は通したか?』
「えぇ……まぁ。しかし、乗って頂いた18名の技術士の内に入っているとは……」
『当然じゃろて。ワシとお前さん以上にアルテミス級を知っている奴がいたら、教えて欲しいもんじゃな』
「確かにそうですが……あなたにはもう前線は――」
『年寄り扱いするでない、まだまだ現役じゃ!――それより新たに搭載した装備の点検がほぼ完了した。装置展開後の最終確認にエクスィーを借りたい。良いかの?』
「エクスィーを?まさかこの状況で外へ出るおつもりですか!?」
『ワシの腕前はよく知っておるじゃろ?』
無茶だ。当時からどれだけブランクがあると思ってるんだ?
「許可はできま――」『天音艦長!!』
「――っ!!」
アストは久々に人から
『ワシもお前さんも当時とは立場が違う。――だがな。この状況で俺とお前なら、迷わず行くだろ?』
なんだよ、年寄りのフリしてたのか……?
でもこの人は、こういう人だったな……
アストは黙り込む。
会話が途切れ、どうしたのかと気になるブリッジのクルーは艦長席をチラリと覗いた。
ここにいる全員が、彼の普段と戦闘時のギャップは周知している。やる気の無い、気の抜けた大人。だけど着いて行けば何故か頼り甲斐がある。そんな人だと。
しかし、今の彼の瞳はまるで 狩人の眼 をしている。そんな一面があるとは誰も知らなかった。
アストは艦長席の通信モニターに映るダニエル軍曹の瞳から視線を外し、前を向く。そして指示を出した。
「エクスィー発艦用意」
ただ、DDの発艦を命じただけ。しかしいつも以上に凄みのある指示出しにサラ副長でさえ気圧される。
「エクスィーが確認位置に移動でき次第、新武装を展開する。すべて問題がなければ発射準備を。
「……Copy」
『なぁに、ちょいと展開後の様子を診てくるだけじゃ――では、中央カタパルトのハッチ開放を頼む』
「――中央リニアカタパルト ハッチ開放します」
ダニエル・オイラー軍曹が乗るエクスィーが腰から下がるDD専用ライフライン(命綱)をカタパルトの固定装置へ取り付け、開けたハッチまでゆっくり歩いてアルキオネの外へ出ると、艦首に追加された新武装の展開位置まで確認へ向かう。
その様子をアストは一切見ることもなく、現状を打開するための指示を出し続けた。先程まで彼を心配していたアストはもう居ない。かつて凄腕のDD操縦士だったダニエル・オイラーという人物を知っているし信頼しているから。
彼が確認位置まで行けることは当然だと思っている。
『――位置に着いた』
流石です……軍曹
「準特殊光子武装砲、展開」
「インヴィンシブルハウザー。展開します」
追加された武装によって突出した球状の突起部分が四方に展開していくと内部から砲身が前方へスライドした。
超天帝級戦艦 《ゼウス級》 2番艦 スィネルギオの
『ハッチ展開機構、砲身冷却装置、光子供給管、ジェネレーターコネクトランプ点灯――』
ダニエル軍曹はチェック項目箇所を素早く確認していく。
『全て問題ない!じゃがこの装備はアルキオネのフォトンジェネレーターに直結しておる!ジェネレーター自体がまだ旧式じゃ!撃てて1発――まぁ帰還を考えないのなら2発は撃てるがのぉ!』
ガハハハッ と自分のジョークに笑う。
「最後の最後に嫌な冗談を言わないでください……」
『すまんすまん』
彼女達がいない今、この武装の一撃でなんとか切り抜けたい
「ダニエル軍曹は退避を!準特殊光子武装砲の収束開始。敵を射線上に集める!右舷 対
「Copy――インヴィンシブルハウザー収束開始。右舷 対
アルキオネの右舷から10発、フレアが美しく等間隔に真っ直ぐ放たれる。
「
もう85%!?――あのサイズの光子武装で、なんて収束速度だ……これが、新兵器の性能……発射タイミングを間違えるなよ、俺。
「パルラスより入電、援軍有りとのこと」
は?こんな時に援軍の連絡??射線軸上では無いな。
「確認は後回しだ!今は確実に当てたい。面舵。慌てずに射軸をデコイフレアの直線状に合わせ」
アストの指示通り慌てず、アルキオネが悠然と右旋回し、
「――収束率98%」
なるべく多くの
――今だ!「準特殊光子武装砲、発射!」
「インヴィンシブルハウザー ――てぇ!!!」
収束が解放されアルキオネの周囲が一瞬、眩い純白に染まる。
放たれた莫大な特殊光子は、太くても最初こそ1本の線だった。しかし、最初の1体に光子が触れた途端、光子の破片が散らばるかのように炸裂し、それが連鎖していく。
もはや無限に炸裂する土砂降りのような光子に当てられ、デコイフレアに集まった数多の
遠目から見たその兵器の光線はまるで光り輝く竹箒のように広がっていた。
うわぁ……資料で見るよりエグい……
こんなとんでも兵器積んじゃったのか……
しかしデコイに集めきれず生き残った個体がアルキオネに迫る。
自動砲座によっていつの間にか生み出してしまった
「
インヴィンシブルハウザーでもダメなのか?!
その時ソフィアから通信が入る。
『アスト なにかがそっちにいった』
「何だ?!なにかって――」
『わからない。
さっきの増援のことか?でもソフィアは
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます