@harujyao

第1話

本当に恐ろしいものは何なのだろう。人によって変わるこの問い。地震などの自然災害・お化けなどのオカルト、人それぞれの返答があるだろう。しかし、本当に恐ろしいものはわからないことである。それが何なのかわからないものこそが恐ろしいことだと思う。




 これは、ある夏の日のこと祖母の家に訪れた私は、田んぼ道を兄といとこ兄妹と歩いていた。何か面白いことないかなぁ。そんなことを言ってみても何も起こることはなく、ただ田んぼの端まで歩く。ケンケンパをしたり、グリコをしたり試行錯誤しながら楽しんでいた。そろそろ日が暮れるそんな時だった。もう帰ろうと来た道を引き返していると、行きにはなかった家がある。兄が「え!なんで、家なんかなかっただろ。」と言う。皆の中で、少しばかりの緊張が走る。いとこ兄が「こういうの、あの家に行ったらなんか起こるんだよ!行かなくていいよ。」と言う。全員怖かったのもあり、その意見に同意した。


 帰り道にあるので、近くまで来たが、その家は洋館という言葉が似合う姿をしていた。まぁ立ち寄ることもないと思っていた。するといきなり大粒の雨が降ってきた。夕立だ。雷の音もなり、まだ祖母の家まで距離があったので、仕方なくその家の入口の屋根で雨宿りさせてもらうことにした。中に明かりがついていたので、兄が「誰か出てきたら、事情を説明すれば大丈夫だよな。」と言う。皆もそうだなと同意して、雨が止むのをただ待っていた。兄、私、いとこ妹、いとこ兄の順で横並びに座って待っていた。しばらくすると、雨が止む。よかったこれで帰れると思い、私が「よし!帰ろう」と言うと、私の隣にいるはずの兄の姿が見当たらない。パニックになる私といとこ妹をいとこ兄は「落ち着いて!怪しいのはこの家だけど、○○(兄の名前)、家入ったりしてないよな?音もしなかったし」私といとこ妹は「ずっといた。入ってない」と震えながら涙をうかべて返答する。いとこ兄は「子供だけで、よくわからない怪しい家入っても危険だし、とりあえず早くばあちゃん家帰って大人呼んでこよう!」と言う。私といとこ妹は同意して、一目散に祖母の家に向かう。祖母の家に帰るとそこには兄の姿があった。意味が分からなかった。3人ともパニックになっている。兄が近づいてきて「大丈夫か?何かあったのか?」と心配してくる。声も姿も兄なのに兄じゃない気がした。怖くなりずっと家にいた父に「兄ちゃんいつ頃帰ってきたの?」と尋ねると父は「○○(兄の名前)、いつ帰ってきたっけ?いつか忘れたけど、、、どうした落ち着けって」となだめる。数時間たち落ち着くといとこ兄が、別の部屋に行こうと私といとこ妹を誘う。別室でいとこ兄は「違うよな!なんか○○(兄の名前)じゃない気がするよな!」と言い、それに私といとこ妹も同意する。するといとこ兄が「今日はもう遅いから、明日もう一回、3人であの田んぼ道に行こう!でも、怖いから家があった付近が見えるとこまでな」と提案してくる。私もいとこ妹も怖かったが、まだ家があるか気になったので同意した。


 翌日、怖かったので、いつも優しくて私たちが言ってるバカな話でも真剣に聞いてくれる叔父についてきてもらい、私・いとこ兄・いとこ妹・叔父の4人で田んぼ道を歩いていく。昨日家があったところが見える場所まで来た。家はない。叔父が「昨日はあそこに洋館があったんだな?」と言い、うんと全員で答える。叔父が一緒だったこともあり、とりあえず田んぼの端まで歩き、引き返す。昨日ならもう家が見える場所に来ても、家はない。結局、家はなく祖母の家まで帰ってきてしまった。


 あの夏の出来事は何だったのだろうか、わからなくて恐ろしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る