変態の証明

saito sekai

一話完結、変態物語。

近所に住むMという男は「我は変態である」と公言していた。しかし周囲はそれに疑念を持っていた。Mは周囲の気配り、明るい挨拶等、いかにも品行方正に見えたからだ。


町内会で「恐竜ツアー」に行った時のことだ。大変なアクシデントがあり、ティラノザウルスが檻を破り脱走したのだ。観客は狂乱に陥ったが、何故かMだけが冷静で、そればかりかティラノサウルスの前に立ち、「今こそ証明する時」と叫びながら、恐竜の口にその身を投げたのだった…


その後、町民達は話し合う。

「Mさんこそ、本物のヒーローであり、銅像でも建てよう!」

「いや、あれはとことん病んでいるね。変態に一票!」

実際、命を助けてもらったことで、養護派は多数。彼の功績を讃え、銅像が建てられたのだ。


除幕式当日、Mを讃える町民達が集まった。その中に熱心にカメラを構えシャッターを切る者がいる。


ある男が「カメラ写すなんて、熱心ですね」と話しかけたら、そのカメラ男はこう言ったのだ。


「いや~あの時のインパクトはもう撮れないと思っているんです。人が食われるシーンを激写出来たのは、私の誇りですねぇ…」と頬を明らめた。 完






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変態の証明 saito sekai @saitosekai

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