薄浅葱の春

ユキ

薄浅葱の春

窓側の隅っこ。

私の前に座るあなたは、私と違うとこばかり。


首が締まるのを嫌って、留めない一個目のボタン。

独特な鉛筆の持ち方。ネクタイの緩み。 

けれどもピンと伸びた背中。

案外、真面目な性格。

柔らかい笑顔。

さりげない気遣い。


私は心の奥底で、そんなあなたを心底、気に入っているようで、毎日、心臓の奥でチクチク何かが疼くのを感じている。


でも、あなたはいつも、私の前に座っているから、気持ちを含んだ視線に気づくことはないのだろう。


と、そう思っていた……


最近、私と君、たった一つの共通点をみつけた。

それは、君も"誰か"に視線を向けているってこと。

目が合わないのは、君が単純に黒板を見ていたからじゃないって、

今頃、気づくだなんて間抜けだね。


でも、簡単に捨てることは出来ないから、

少しずつ、齧(かじ)って一人の時に吐き出してみるよ。


この先も紅く実ることはない。

いや、きっと青にすら届かない。


私の薄浅葱色の春。

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薄浅葱の春 ユキ @YukiYukiYuki312

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