僕の姉さん

小深純平

第1話

僕、 本田武雄の家は関東のS県の田舎にある、もともと農家だったので、大きな家と広い敷地を所有しており地元では知られていた、僕が長男なので自然と跡を継いでいた。父は10年前に他界してその5年後に母が老人ホームにはいっていた。

 僕の兄弟は2歳上の姉、山上圭子と2人兄弟である。姉は結婚して2人の子供がいる。上は女の子で下は男の子である。8年間東京に住んでいたが父が亡くなったのと母が老人ホームに入ったのを機に実家に引っ越してくることになった。僕がまだ独身だったので広い家には1人じゃもったいないとか言い、勝手に引っ越してくるのである。

 圭子は学業成績は優秀で地元の高校では常にトップだった。大学は国立のT大法学部を目指し現役で合格した、その高校創立以来の才媛と言われ自慢の姉だった。

 大学ではもちろん司法試験を目指し2年生の時に択一試験には合格した。

やはり学内でも注目の的になり将来を嘱望された。

 当然、翌年は司法試験に合格し法曹の道を歩み始めるはずだった。

しかしその後、最終的な論文試験はさっぱりになってしまった。

 本人もよくわからず悶々と数年が過ぎてしまった。

 家からの仕送りで専門学校に通い毎年受験していたが論文試験でつまづき合格することはできなかった。そのうち圭子も30近くになり知人の紹介で結婚することになった。相手は予備校の数学の講師で、人気講師らしく1コマの時給が高給で週に3日くらいしか働かなかった。空いた時間はほとんど酒と囲碁将棋に明け暮れていた。彼、山上誠冶もT大卒で、圭子はその部分がお気に入りのようだった。誠冶は空いている時間が多く労働意欲も乏しかったので生活に対する自覚が足りなかった、時々家賃を滞納して僕の実家の母親が送金をしていた。そのうち生活もままならなくなり圭子は初めてのアルバイトをした。始めると労働時間も徐々に長くなり、勉強は少しずつ遠ざかっていった。誠冶は妻が働くことに満足してますます働らなくなった。誠治は理系の人間で司法試験など全く意にも介せず、不合格を不審におもっていたくらいだった。

 すぐにでも弁護士になって稼いでくれると思っていたらしい。

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