イクシード
あに
第一章 イクシード
第1話 8の月
誰が言ったか2030の8の月に世界が滅びると、結局世界はいつも通り回っている。
そんな中俺は仕事に追われ今日も残業をして家に帰ろうとするが、妙な気配だな。
途中でコンビニに寄ってから飯を買って家に急ぐが妙な感じは拭えない。
街灯の下で何かが蠢いている。
「…な、なんだ」
声を振り絞って出たのはそれだけだった。
こちらをみる目は血で染まり小人のような右手に凶器を持っている影が見える。
「に、にげ」
逃げようと思ったが、その小人はすごい速さでこちらに向かって来たので反射的に蹴ってしまう。
『グギャ!』
「昔の癖でつい足が出てしまった」
昔、サッカー部だったのでその癖だ、綺麗に決まったので見ていると消滅して行く。
「へ?」
『初のモンスター討伐を確認、初モンスター討伐報酬を授与』
「は?ほ?」
頭の中でそんな声が聞こえると、俺は消滅したものが気になって見に行く。
ダガーが二振りと明らかに中で黒い渦を巻いているような石が落ちていた。
そして街灯の下は喰われかけた女の死骸だ。
「おぅええ」
とその場で吐き出すと、警察に連絡した。
翌朝目覚めると体が少し軽くなった気がして鏡を見る、当然自分が映っているのだが体付きが全くの別人…いや、若返っていた。
下腹は引っ込んで久しぶりに割れた腹筋を触る。
昨日の警察官から少し話をしたいと言われたから会社に連絡して休みをもらわねば…
スーツを着て朝飯を買いがてらコンビニに寄りおにぎりを買って外で食べる。
会社に電話するとまぁ、用事が用事なだけあって休みをもらえた。普通ならもらえないブラック企業なんだがな。
一緒に買ったエナドリを飲む、一気にはきついからゆっくり飲む。
ようやく飲み干してゴミを捨てにコンビニの中に入る。外に出ると晴れているな、暑い、日差しが…
歩いて警察署に行くと昨日の人が出迎えてくれる。
「やぁ、時雨さん」
「あ、お疲れ様です」
そして取調室に連れて行かれて話をすると、
「それじゃあ、第一発見者の
「はい」
それから発見した経緯などを喋り、遺体には触っていないし、指紋も検出できなかったので俺は晴れて容疑者から外された。
「もし何か思い出したらこれに連絡を」
と名刺をもらう。
「はい」
と俺は今日はこれで帰れることに安堵して街をぶらつきながら帰ることにする。
実はあの時の事で一つ嘘をついた。
ダガーと黒い石は俺が持っている。
どこにと言うと『収納』と言うスキル?と言うもので俺の中にあって違う場所にあるもの?と言う感覚が正しいかな?
出し入れは自由だがまだ出したことはない。あの後自宅に帰りシャワーを浴びると晩飯を食って寝てしまったからだ。
「さて、どうしたもんかな」
と、歩いていると、
「キャアァァァァ」
と声がするのでその場に急ぐ、
『グギャー!』
「まて!」
と言う俺はその小人にダガーを出して刺していた。
『グギャ…』
と言って消滅したので女の人は無事か確認すると刺されて死んでいる。
またか、と思いながら落ちているものは鉄?の剣と黒い石だったのでそれもまた収納に入れて警察に連絡を入れる。
「また時雨さんですか?」
「そのようで、ハハ」
「時雨さんが来た時には?」
「もう死んでいたようで」
「触ったんですか?」
「いやいや、触ってません!こ、怖いですし」
「なぜ死んだと?」
「息してないようでしたから」
「なるほど」
俺はまた警察署に逆戻りだ。
すると警察署の中が慌ただしくなっている。
「有働さん」
「何かあったのか?」
と有働さんが離れていく。
俺は貼ってあるポスターなんかに目をやりながら有働さんを待つと、
「まぁ、また呼び出すかもしれないが被害者から指紋も取れていないし、帰っていいぞ」
「わ、わかりました」
有働さんはそれだけ言うと走って行ってしまった。
俺は警察署を出て、多分あの化け物だろうなと思った。
今日は2030年8月の15日、まだまだ暑い最中だ。じゃなくて誰かが言った“あの時”なのだからだ。
これがあの時なのか、俺にもわからないがただ一つ言えることは俺は巻き込まれてしまったようだな。
「はぁ、正直見たくは無いが、ちゃんと見るか…ステータス」
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レベル3
スキル 剣術極 体術極 収納
ユニーク 幸運 魔法の素質
称号 第一討伐者
SP 1002
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「ふむ、このSPというものでスキルを取得できるみたいだな」
化け物を倒した数は二体だから2増えてるのか。
極めというのはその後がないようだな。
「はてさて、どうしたもんかな」
警察署でステータスを弄るのはやめておいて近くのファミレスに寄る。
久しぶりに大盛りポテトを頼んで、食べながら取れるスキルを見ると膨大な数が並んでいる。
しかも収納は1000SP必要なので最初から持っている俺には必要ないな。
魔法なんてのもあるな、ほんとに魔法なんてのも使える様になるのか?収納が使えるから使えるか。
大盛りポテトを食べながら空中をぼーっと見ているおっさんはとてもマヌケなおっさんに見えただろうな。
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