23 美食


 今日は1日、掃除と勉強になる。


 連休とはいえ、教師陣は生徒たちを遊ばせておかない。これは前世でも同じだった。


 だけど私にとって宿題は簡単すぎる。賢者アールグレイに現代の知識習得をしないかと持ち掛けて、彼に宿題をやってもらっている間に部屋を掃除した。


 単純な作業……掃いたり拭いたりするのは、ほうきと雑巾に魔法をかける。タスクを淡々とこなしてくれるので、とても便利な魔法で、見えている大雑把なところは自動化したほうきと雑巾が処理してくれるので、私はその間に目につきにくい細かい場所を丁寧に掃除していく。


 当然の結果ながら私が自室の掃除をいちばん早く終わらせた。ひとり二部屋を掃除することになっているので、もうひとつの部屋の掃除に取り掛かろうとしたら、キャムが部屋から出てきた。


 ここで断言する。コイツは絶対宿題と掃除をちゃんと終わらせていない。


 まあキャムのことは放っておいて、私は自分の担当部屋の掃除へ移った。


 お昼は昨夜の晩食の余りものであるラトエ湖で採れた魚とキノコをベースにした「たっぷりキノコあんかけ白身魚のソテー」と昨日、買っておいたパン、キノコスープを準備して皆を呼ぶ。


 私以外の人たちは苦戦していた宿題を終わらせて、これから部屋の掃除をしようとしているひと達ばかりだ。でもサラサはまだ宿題が残っているという。


 サラサっていつも一緒にいるから知っているけど勉強もかなりデキる。宿題で出された問題など容易く解けそうな気がするんだが……。


「わからないところがあったら教えようか?」と話しても「大丈夫だから」と断られた。


 ひとり足りないと思ったらキャムがいない。彼の分も気に入らないが用意しておいたのにいやしない。そういえばさっき外へ出て行った気がする。


 午後の遅い時間になってようやくサラサが部屋から出てきたが、向かった先はキャムが使っている部屋。私はようやくサラサの置かれている状況に気が付いた。


 日が暮れ始めた頃にキャムが外から帰ってきた。今日の夕食は疲れているはずだから外食にしようと朝からみんなで約束していたが、出かける前にキャムを問い質す。


「あ? テイラー家の使用人なんだから身の回りの掃除なんて当たり前だろ?」

「じゃあ宿題は?」

「宿題はただのサービスだ」

「アホか!」


 自分の宿題をブリキ人形にさせたことを棚に上げて怒る。サラサがキャムの宿題とキャムと自分の分を合わせて4部屋分掃除している間にみんなで手分けして廊下や食堂などの共有スペースの掃除を終わらせた。


 ポカッと頭を小突いたら顔が真っ赤になった。


 やるか? ついでにここで積年の恨みを晴らしてやる。


 しかし、キャムは握りしめた拳から力を抜いた。「はぁぁー」と大きな深いタメ息をついて、自分の部屋へと入って行った。


「まあ、彼もいろいろ思うところがあるようですよ」


 ミラノがキャムのサポートをするが、キャムの話にいたっては余計なお世話。ヤツがなにを思ってようが関係ない。


 目の前でタメ息を吐くなんて無神経にもほどがある。まあ元々クズ男だから期待などしてはいないが。


 キャム以外で夕食に出かけた。お昼後、ロニが先に行って予約してくれていたステーキが食べられるレストラン。


 前世もそうだが、前菜として出されるスープってなんでこんなにおいしいんだろうか? 


 スープでお腹いっぱいになってメインディッシュがあまり食べられないこともあるので、注文をとる時にスープの量を聞いて欲しいとこういうお店に来るたびに思う。


 ちなみにスープはお店の料理人が手間暇かけて仕込んだもので、スープを飲めばそのお店が美味しいかどうかが把握できると言われている。


 ステーキが運ばれてきた。ひと口目を食べた瞬間、口の中に芳醇な香りと肉汁が口いっぱいに広がる。その後にやってくる甘みがまた絶妙で、味わい深さと香り高さに舌鼓を打った。


 そんな至福の時間が過ぎてデザートとコーヒーを楽しんでいると、事件が起きた。


「ま、魔物が出ました。避難してください!」



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