22 肝試し
「……ここ?」
「はい」
今はもう廃窟になっている地下3階までしかない浅くて狭い小さなダンジョン。最下層の奥の部屋から夜な夜な子どもの声が聞こえてくるという心霊スポットになっているらしい。
誰だよ最初に見に行ったヤツ暇人かよ!? と心の中でツッコミを入れてないと怖くて気を失いそう。
「よし、じゃあふたりひと組で4組に分かれて行こう」
おま……ふざけるな皇子、嬉々とした
えーこの中で誰が頼りになる? ……あ、わかった。光の聖女さまだ!
「ねえサラサ~」
「サラサ、俺と組め」
私が話しかけると、横からキャムの邪魔が入った。しかし……。
「ちょっ……痛たたたた、イテーって」
「サラサはわ・た・しと組みたいんだって~ねえサラサ?」
キャムの肩を掴まえ、魔力で強化した握力で握りつぶすくらいのチカラを加える。なんならこのまま握りつぶしてもいい。
「わーったよ……ウェイク、俺と組め」
「ああ、いいぜ」
よかった。サラサと組めて、なんたって光の聖女様だ。悪霊とか出てきたら光魔法でなんとかしてくれるに違いない。
ミラノはまたエマを誘った。──ということは残りがレオナード皇子とロニのふたりになった。
私はサラサの背中にピタリとくっついて離れない。
「あ、あの……シリカ」
「ん?」
「
サラサが私を呼んだので顔をあげた。ボソボソ言ってて聞き取れなかった。なんでそんなに顔が真っ赤になってるの? わかった。人前でくっつかれるの苦手なタイプなんだ。そんなの気にしない気にしない。
ダンジョンなので、4組別々に進んで地下3階の奥を目指す。真っ暗なので皆、ランタンと予備のたいまつと着火器は準備している。私とサラサだけ彼女が光魔法で周囲を明るく照らしてくれているので安心感がハンパない。光魔法は全体的に不死属性の魔物に効果があるので、
何事もなく、地下3階の一番奥の部屋の前まで着いた。光量が十分だったお陰なのか、私たちふたりが最初にこの場所へ到着した。
「・す・・」
「え? サラサ今なんか言った?」
「いいえ、私はなにも」
誰かの声が聞こえた気がしたが……。
「
ハッキリ聞こえちゃった……男の子の声……部屋の向こうから確かに聞こえてしまった。
「入りますか?」
「ブンブンブンブン」
ふたりで入るとか恐ろしくてありえない。もう引き返したいくらいだ。私は光の速さで頭を横に振った。
「ちっ先を越されたか」
「あ、ここで合ってたぁ」
「……」
キャムやレオナード皇子が数分遅れてやってきた。最後にミラノとエマが無言で到着した。なんかふたりとも元気ないけど途中で怖い目に遭ったのかな?
「じゃあ開けるぞー?」
そう言いながらウェイクが無造作に奥の部屋の扉を開けた。
『キィ、キィ』──部屋にはこの場所に住んでいた人がガイコツとなって揺れる椅子にもたれ掛っている、生活ができそうなものはなにもなく、本棚や机の上はここを訪れた不届きものの手によるものなのか荒らされた跡が残っていた。
ガイコツが腰かけているロッキングチェアは部屋の何か所か崩れて隙間ができている。そこから冷たい風が絶えず流れ込んできていてその風でゆっくりと揺れていた。
さっきの男の声ってこのロッキングチェアの揺れる音だったのか。音の高さから考えるとすごく近いと思う。
なーんだ、メチャクチャびびって損した……。まあ肝試しってこんな感じだよね?
謎の声の正体が解けたところで帰りはみんなで固まって地上まで引き返した。
「ふぇ?」
「あー実はですね」
地上に戻る階段を登りきると、近くの石に腰かけているミラノとエマがいた。さっきまでいちばん後ろをついてきてたのに?
ミラノの話では、地下1階の途中でエマが怯えたので、断念してすぐ地上へ引き返したので地下3階まで行かなかったそうだ。
じゃあ、さっき何もしゃべらなかったミラノとエマはいったい……。
「……よ、よし帰ろう」
冷や汗をかいたレオナード皇子の提案に皆、激しくうなずいた。
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