第28話埼玉へ(2)·東京都練馬区

充電切れで困っているところを助けてくれた田部さん、田部さんの家へは歩いて十分かかった。

ごくありふれたニ階建ての家、玄関に入ると独特なデザインの傘立てが目についた。

「ありゃ、なんですかこの傘立て!」

「おぉ、目の付け所がいいな。それはワシの手作りじゃ」

「えっ、これ田部さんが作ったの!?」

「そうじゃ、せっかくじゃし書斎へ来てくれ。」

田部は古賀を書斎へ案内した、書斎のコンセントで充電している間、古賀は書斎のありとあらゆるところに目をつけていた。

「もしかして、あれも田部さんが?」

「あぁ、そうじゃよ。この本棚もテーブルも写真立ても、みーんな手作りじゃ。」

「へぇー、DIYが趣味なんだ。」

「まぁ、趣味として始めたのは割りと最近じゃけど…。元は大工でな、こういうのは得意じゃよ。」

「なるほど、昔取った杵柄ということですか。」

「妻もワシの工作を好きじゃったんだが…」

「えっ…田部さん?」

「妻は今、入院中でな…。もう先があまり無いみたいなんじゃ…。」

古賀は田部の心中を察し、それ以上は何も言わなかった…。

「あんた、電動バイクで旅をしているんじゃろ?」

「えっ、どうして解ったのですか?」

「顔を見れば解る、あんたもワシも趣味が生きがいの男じゃ。」

それからすっかり気の合った古賀と田部は、互いの趣味について一時間ほど語り合った…。

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