3.ただの月

 イケメン名前知らないの話を聞き流しながら、空を見上げる。


 雲は流れ、木々は揺れる。


 ジリジリとした熱とうだるような風、今日も暑くなりそうだな。


 んっ?いやいや、昨日のこの世界のことは知らない。


 それにしても隣のイケメン、通りすがりの女性から、やたら視線を集める。


 やはりコイツは敵だ。


 今日の羅火は、なんかいつもと違う。いつもより大人しいというか、とても可愛い。そのせいかいつもより、男たちの視線が羅火に向いている。


 俺が守らなければならない。


 隣のイケメンが、周りを睨むようにギロギロしだした。


 その光景をみて、何をしたいんだコイツは、かなり引いた。私は、イケメンから一歩、二歩下がる。


 駅に着き、足が竦んだ。何だこの乗り物は?魔導列車とはまた違った四角い箱のような。イケメンが言うには、電車というらしい。


 そして電車に乗り、痴漢にあった。私は、腹立たしさのあまり呪詛をかけた。奴の肩から指の先まで、もう動かすことはできないだろう。


 私は、後ろ蹴りで奴に止めを刺した。


「気持ち悪い」


 身の毛もよだち、鳥肌が立つ。今は異性ではあるが、怖かった。


 ようやく学校に着き、教室に入ると女学生がおはようと挨拶をする。私は、ひきつった笑顔で挨拶を返した。


「おはよぅ」


「今日は、元気ないねぇ。どした?ほら、おにぎり食え食え」


 そう言って、私はおにぎりを口に押し付けられる。何なんだこの女は!


 まあ、差し出されてたものは、食べねば失礼というもの。ム…これは、美味だな。


「ほら、お茶も飲みな」


「ありがと」


「うー、今日の羅火は、いつもり可愛いな~」


 うりうりと抱きつかれ、周りの男子学生は羨ましそうに見ている。


 しかし女性とは、柔らかいな。触れた箇所が弾力があり沈んで、崩れてしまいそうだ。


 満足したのか、ようやく女生徒は解放してくれた。


「今日は、どうする?」


「どうするとは?」


「バンドだよ」


「バンド?」


「私たちバンド活動してるでしょ」


「そうだね」


 変に思われないように、頷く。


「でも羅火は今日、確か委員会あったね。明日にしよっか?」


「そうだった。ごめんね」


「羅火は、私のワガママに付き合ってくれてるんだから謝らないで」


「うん」


 委員会とは?しかしその委員会が終わった後、バンドについて学んでおく必要がある。


 この世界についてわかったことがある。学校とは、学び舎のことで。将来社会に出て、国のために働くための教育機関のことのようだ。


 そして戦争とは、遠い場所にいる、それがこの日本。

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