くだらないことのすべて、一秒後に胸を揺らすことのすべて

座敷アラジン

第1話

 人生というものは、思えばくだらないものの積み重ねなのかもしれない。

 特に僕なんかの平凡な人間の人生にもなってみれば、とてもじゃないが壮絶な、あるいは感動的な出来事なんか、どこを掘り返しても出てこないのではないだろうか。

 こんなことを大きな声で言ってしまうと、捻くれているとか、斜に構えているだけだとか言われてしまうかもしれないが、それも事実なのだろう。僕自身には、それらを否定する気はさらさらない。

 だけども、勘違いしないで欲しいのだが、僕は決してなりたくてこんな自分になったわけではないし、まして格好をつけて今の自分を偽っているわけでもない。

 その点においては、今の僕は、誰よりも自分に対して正直であるという自負すらあるのだ。

 まあ、自分に対して正直になったところで、人生をくだらないものの積み重ねだなんて言うような人間は、やっぱり捻くれていることは捻くれているんだろうが、しかしそれはそれ、そう思ってしまうのだから仕方がない。

 それが僕という人間の、物の見方であり、世界の見方であり、世界観なのだ。

 よって、生憎くだらない経験しか持ち合わせていない僕にとっては、ここでこの話を切って捨ててしまっても、全然、構うことはないのだが、それではここまで読んでくれた人に申し訳が立たないだろう。こんな文章を一体どれほどの人間が読みたいと思うのかは、甚だ疑問だが。

 だからあえて、ここでは読者諸氏の名誉のためとさえ言ってもいいかもしれないが、兎に角、僕はここで何かしらを語らねばならないのだ。

 だからこそ、僕はこの文章の頭に『人生というものは』などという大層な言葉を綴ったとも言える。

 僕のような不逞の輩が、いや、実際にそう呼ばれることすらなかったような人間が、人生について語るというのは、実に烏滸がましい話かもしれないが、それでも僕には語るべき理由が、語らねばならない理由があるのだ。 いや、この場合は理由というよりは資格といった方が適切かもしれない。

 僕には、人生を語る資格がある、と。

 さて、前置きはこのぐらいにして、そろそろ本題に入るとしようか。

 一応、もう一度説明しておくが、人生とはくだらないものの積み重ねなのだから、これから語られることについて、君達は決して身構えてはいけない。

 くだらない、与太話を聞くつもりで、気を楽にして聞いてほしい。

 この話は、くだらなくて、退屈で、それでいて取り返しのつかない話なのだということを、頭に入れておいてほしい。

 それではいい加減話そうか。

 僕の人生を。くだらないことのすべてを。その、ほんのひとつまみを。

 

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