主人公だと思って拾った銀髪美少女が、どう考えてもラスボスな件について。
seeking🐶
1章 プロローグ
第1話 転生
俺は俗に言う転生者というヤツだった。
俺の転生前はどこにでもいる普通の会社員だった。
ちょっとだけアニメが好きで、ちょっとだけゲームを嗜む。
そんな腐るほどいる人間の一人だった。
そんな俺はある日突然、異世界に転生してしまった。
ある程度の知識はあったから、異世界転生というイベントは冷静に受け止められた。
それに幸運なことに、俺は親ガチャ大当たりを引いたようで、そこそこ有名な貴族の長男として生まれた。
高度な社会制度や現代技術のない世界では、貧乏家庭に生まれて、そこら辺で野垂れ死にというのは珍しくない。
むしろ、そのパターンがほとんどを占めてしまうだろう。
俺はそんな異世界転生における大きな大きな第一関門を突破した。
しかし、そんな俺に早々に第二関門が迫ってきていた。
それはこの世界そのものだった。
俺は有名貴族として世界中の情報や資料を閲覧できた。
その中の世界に関する記述で、明らかに前世で聞いたことのある単語が頻出していた。
《パルティア王国》《新第四帝国》《邪神グレイデア》
三つの特徴的な単語は、元の世界の《絶望の王国》というゲームに登場する単語だった。
絶望の王国……
絶望はその通称の通り、あまりに絶望的な展開と、救いようのない世界観が売りであり、プレイしたゲーマーの中でその絶望という通称が浸透していった。
絶望が絶望たる理由の一つは、そもそも主人公がランダムスポーンというトンデモ仕様のせいだ。
危険しかないスラム街からスポーンしたり、なんなら敵国である帝国の奴隷としてスポーンすることもある。
生まれは完全にランダムで、パターンは数十通りほど用意されているが、その全てがどん底から始まってしまう。
生まれてから早々に、主人公はとんでもない難易度の世界で生きることを強いられてしまうのだ。
そんな主人公は18歳まで生きることもできず、そこら辺で野垂れ死にしてしまうパターンが半分以上のエンディングを占める。
終わりだ。この世界は終わりだ。ついでに俺も終わりだ。
絶望自体をプレイしたことはないものの、プレイせずとも、その評判はネットの記事や反応で痛いほど聞いていた。
こんなクソゲーをやらせるな! と企業に問い合わせが殺到し、トンデモクソゲーとしてむしろ、そっち方面の人気が爆発するくらいのクソゲーだ。
そんな世界に、俺は転生してしまったのだ。
主人公が死んでしまえば、帝国が王国を蹂躙し、邪神が世界を支配する。
少なくとも、世界は滅びに向かい、遅かれ早かれ俺も破滅エンドに突入してしまうだろう。
100以上あるエンディングの中で、世界が救われるのはたったの5つ。
100分の95で、世界は滅びる。
このまま世界の流れに身を任せれば、俺が生き残れる可能性は5パーセント以下だ。
俺が何かしらアクションをしないと、この世界は破滅ルートを全力で走り抜けてしまうだろう。
俺はこの世界が絶望の世界だと悟った瞬間から、もう本当に死ぬほど努力を重ねた。
毎日狂ったように修行に励み、ストレスで精神がボロボロになるくらい鍛錬を続けた。
このままじゃ遠くない未来、俺は絶対死ぬんだぞ と何度も自分に言い聞かせ、血反吐を吐き散らしながら剣を振り続けた。
15歳になる頃には、俺のレベルは200を超え、俺は王国でも無敵の存在となった。
それでも足りなかった。それでも目的の達成には程遠かった。
この世界の破滅エンドを避けるためには、まだまだ一番大切な要素が足りなかった。
破滅エンドを避けるためには、主人公の生存が絶対である。
つまり、俺はランダムスポーンする主人公を、見つけ出し、保護しなくてはならなかった。
俺は主人公を探すため、18歳で家を出た。
ストーリー開始は主人公が15歳になる時期だ。
つまり、あと三年……俺はあと三年で主人公を見つけ出さなくてはならなかった。
確か……主人公の名前はリ……あれ? なんだっけ?
やったことのないゲームだから、記憶があやふやだ。
ラスボスの名前がリ……なんとかで、主人公の名前もリ……なんとかだった気がする。
リから始まることは分かる。
でも、それ以降の名前が思いつかない。
三文字くらいだったよな??
リニア? リリア? リリス?
まぁとにかく、そんな感じの名前だった気がする。
そこそこ珍しい名前だし、主人公の潜在魔力は世界でも有数のバケモノクラスだ。
流石に、会ってしまえさえすれば絶対に分かるはずだ。
死ぬほどハードモードの環境の中で、とんでもない潜在魔力のバケモノが紛れているんだ。
ラスボスクラスの潜在魔力の持ち主と間違えない限りは、流石に主人公を見分けることはできるはずだ。
とにかく、何がなんでも、主人公を見つけ出すんだ。
そうじゃなければ、破滅エンド以外残されていない。
俺の頭の中は、そんな思考で支配されていた。
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