幼馴染を寝取られ全校生徒から嫌われた俺、なぜかド変態な美少女転校生に身も心も捧げたいと隷属を志願されている
本町かまくら
第1話 幼馴染を寝取られた
突然だが、幼馴染が俺の部屋で男と交わっていた。
…………。
…………。
……もう一度言うが、幼馴染が俺の部屋で、しかも俺のベッドで男と交わっていた。
「……なんだこれ」
絶句せずにはいられない。
学校から帰ってきたらこんな場面に出くわすなんて……目を何度も擦って、瞬きをこれでもかというくらいにしてみても、今目の前で起こっていることは残酷ながら現実だった。
「あ、あんっ! だ、だめぇ!!」
「そんなこと言って、欲しいんだろ?」
「斗真のいじわるぅ!」
「ったく、この女は最高だぜ。おらよっ!」
「んむぅっ!!!!」
固まる俺。
「(マジなんだこれ⁉ ありえないだろこんなの⁉)」
ちなみに、幼馴染と言ってもただの幼馴染ではなく、俺と彼女は付き合っている。
正真正銘の彼女だ。
……そのはずだが。
「なぁ、あいつよりすごいだろ?」
「うん! あんな奴よりいい! あんなヘタレよりいいよぉっ!!!」
「フハハハハハ!!! 最高だ!!!!」
頭がズキズキと痛む。
「(ってか、なんで俺の部屋に入れてんだ⁉)」
確かにお互いの家を割と自由に行き来はするが、それはそれぞれ家に人がいる場合のみ。
でもたまに俺に用事があって、先に家に行くとかで合鍵を渡したことはあったけど、今は渡してないし……。
「(……あ。そういえばこないだ、合鍵の隠し場所教えたんだった)」
前にいちいち渡すのが面倒で、郵便ポストにあることを教えたことを思い出す。
まさかこんな使われ方をされるとは思ってもなかったけど。
「(……はぁ。ほんと、どうすればいいんだ俺は……)」
こめかみを抑えながら、俺はどうするべきか悩んでいた。
今ここで部屋に入り……ってかごめん、マジなんで俺のベッドでヤってんだよ。
――閑話休題。
今ここで部屋に入り、問い詰めるというのも手だ。
現場に突撃すれば言い逃れできるわけがないし、すぐにカタがつく。
それができたら一番いいのが……おそらく今の俺にそんな度胸はない。
加えて、状況が意味不明すぎてイマイチ理解が追い付いていないのだ。
ということは、今ここで行動を起こすのは悪手。
「(ひ、ひとまずこの場から立ち去ろう。それで一回、考え直して……)」
――キィィィ。
「だ、誰⁉」
「おい、誰か帰ってきたのか⁉」
「そんなはずは……!」
……なんてこった。
足を踏み出したら床が大げさに軋むとか、どこまで俺は神様に嫌われているんだ。
肩を落としていると、上裸の男がドアを開き、そして俺に気が付いた。
「こ、九重⁉ なんでお前がここに……」
「それは俺のセリフだわ!」
ツッコむと、一瞬動揺する男だったが、はぁと開き直るかのようにため息を吐いた。
「ったく、今日は帰りが遅いって話だっただろ、愛花」
「ち、違うよ斗真! 委員会の仕事で遅くなるって、雅が言ってたんだもん……」
「……はぁ、まぁいいけどさ」
俺にとっては何もいいことではないが。
愛花――そう、俺の幼馴染で彼女の天野愛花は俺の布団で体を隠し、俺のことをじっと見ていた。
「愛花、お前……」
俺が何を言いたいのか自分でもよくわからなかったため、俺は愛花に視線を返すことしかできなかった。
視線を交わすだけの俺たちを見て、男はハッと笑った。
「こうなったらしょうがない。愛花、この際だから言ってやろうぜ」
男……いや、斗真と呼ばれている黒髪マッシュが愛花に近づき、愛花の肩に手を回した。
「悪いな、九重。お前の彼女とっちゃったみたいでよ。でもさ、お前が悪いんだぜ?」
「……は? 何言ってんだよ」
「だってよ、お前が愛花を満足させられなかったから、愛花はこんな女になっちまったんだぜ?」
軽薄な笑みを浮かべ、斗真が愛花に促す。
「おい愛花、この際だからいつも俺に言ってるみたいに言っちゃえよ。そこの彼氏の不満をよぉ!!!」
愛花は黙り込み、そしてゆっくりと口を開いた。
「……雅が悪いんだよ。雅が全然、私に迫ってこないから! いつも私がエスコートして、雅から何もしてこない! 付き合って半年も経ったのに、未だにキスだってしてくれない! だから雅が悪いんだ! 私をこうしたのは、全部雅が悪いんだ!」
「何言って……」
「だってよチキンくん。愛花の言う通り、全部お前が悪いんだよ。お前のせいでこんな、彼氏のベッドで他の男とヤるような女になっちまったんだよ!」
斗真に引っ張られ、愛花も開き直り笑い始めた。
「ふふふっ、やめてよ斗真。これ以上はかわいそうだよぉ?」
「これ以上って、今の状況に上はねぇだろ」
「あはっ! そうかも!」
「ったく、この女はほんとイカれてんな。でも、そこが最高にエロくていいんだけど」
「きゃっ! も、もうどこ触ってるの? 今目の前に彼氏がいるのにぃ!」
「それがいいんじゃねぇか!」
「もう、斗真のヘンタイっ♡」
……俺は再び、絶句していた。
「(マジでなんだこれ、夢か? 夢なのか?)」
しかし、ちゃんと胸は痛い。
今起こってるこのカオスは、現実なのだ。
「なぁ愛花、この際だから言ってやれよ」
「え、なにをぉ?」
「決まってんだろ? 最後の言葉をだよ。もうお前なんかいらないって、言ってやれ」
「斗真ほんと最低っ♡ でも、そうするねっ」
「はぁ、最高だぜこの女」
愛花が絶望する俺の方に視線を向け。
俺が今までに見たことがない、恍惚とした表情を浮かべて言った。
「バイバイ、雅。私の心も体も全部――斗真のものだからっ♡」
――かくして、俺は幼馴染を寝取られた。
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