ENDmarker.
キョウカに出逢ったのは、こんな感じの路地裏だった。そう、同じように派手にやられて全身ズタズタで。真っ赤に染まった俺を、何も言わず担いで運んで、介抱して。出来のわるいお粥のなりかけみたいな熱いやつを口移しで。
さすがになんかこうだめだったので、お粥は自分で作ったし、彼女のぶんも作った。気に入ったらしく、それから料理はこちらの領分になった。
彼女が、全ての原因でもあった。
静かでざわつきのない水平線のような心は、人ではないものを呼び寄せる。なんというか、人ではない何か。機械みたいな。そういう、心が欲しいものに、狙われ続ける。
自分も、その心の持ち主だった。
全てを水平線の彼方に追いやって、心を透明にできる。
そして、それを使って人ではないものを殺し続けてきた。
たまたま彼女が近くにいたから、殺す数が2倍になってしにかけた。それだけで、まぁ、心が動くこともなく。このまま消滅か、と思っただけ。それが彼女に担がれて、介抱されて、お粥を作って、そしてそのまま今日まで。
せめて彼女は、人ではないものに狙われないでほしいと思った。それで、多少無理をして任務をこなして。彼女の心と引き換えに、こうやって今、路地裏に転がっている。次に人ではないものが来たら。消滅する。
消滅したかった。理由はない。最初からそう思っていて、それを求め続けているだけ。人ではないものに食われれば、消える。存在そのものが消え去って、きれいさっぱり、街のなかに消滅していく。
こんな路地裏でも。心は静か。うつぶせで倒れているので、星が見えない。夜だと思うんだけど。暗いし。消えていくのか。これで終わりか。彼女のことを、考える。消えるのだろうか、彼女の中からも。彼女のベッドの寝心地を、思い出す。ちょっとマットレスが固い。もう少しやわらかいほうが好みだった。あと数年使えば。俺好みのやわらかさのベッドに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます