第10話 歓迎会(容赦ない暴力)


 歓迎会。

 という名の腕試しは騎士団の恒例行事と言っていい。新しくやって来た人間がどれほどの実力かを把握するのは、戦闘を生業にする人間にとって必須ですらあるからだ。


 ただ、容赦なく三対一・・・を強要されているのは呆れるしかないけれど。


 広い演習場には騎士団の人間が壁沿いに並び、『いいぞ!』『やっちまえ!』『顔には当てるなよ!』『服で隠れるところを狙え!』といった下品な声援を送っている。

 そんな騎士たちの中心。空いたスペースで私と向かい合っているのは三人の男たち。自己紹介もされてないし、身長順に大・中・小でいいか。


 三対一。

 どう見ても三対一。

 男三人対、私。

 大・中・小 vs 美少女。


 それぞれの武器としては、大が大剣。中が片手剣と盾。小が両手にナイフ。

 対する私に武器はなし。


 いや、刀は空間収納ストレージに入れてあるから問題はないのだけど、私が空間収納ストレージを使えると知らない人間からすれば武器なしに見えるはず。だというのに剣を貸してくれる様子すらないとは……。なぁんか、思ったよりゲスな連中みたい。


「――はじめ!」


 審判役らしい騎士が試合開始を告げる。いや私武器持っていませんが? いくらなんでも嫌がらせが過ぎません?


「へっへっへっ、」

「泣いて許しを請うなら許してやるぜ?」

「お前みたいな美人を傷つけるのは本意じゃねぇからな!」


 とか何とか言いながら、嗜虐的な笑みを浮かべる三人。


 ――よし、容赦する必要はなさそうね。


 魔力で糸を紡ぎ出し、一番大きい男の両足に巻き付ける。


「うお!?」


 足が思うように動かなかった男がその場で転ぶ。無駄に図体がでかいので倒れただけで大きな音がするし、砂埃も舞う。残った男二人も無視しきれなかったようだ。


「おいおい――」


「なにをして――」


 中と小が振り返ったところで、身体強化ミュスクル発動。一歩で中と小との距離を詰め、中の鳩尾に肘を叩き込み、続けて小の股間を蹴り上げた。


「うっ!」


「ぐぅ!」


 悶絶しながら倒れ込む中と小。残った大にも魔法で電撃。気絶させる。


 勝利。

 三対一でも完勝であった。


「……弱っ」


 あまりにもあっさり制圧できてしまったので、思わず声を漏らしてしまうと、


「――ふざけやがって!」


「てめぇら! やっちまえ!」


 壁際にいる騎士たちが一斉に襲いかかってきた。ちょっとー。こっちはか弱い美少女なんですけどー? そんな纏めてかかってきて恥ずかしくないんですかー?


 ……なにやら王都の親友たちだけではなく、暁の雷光の皆まで『え? か弱い?』という反応をしたような気がするけれど、気のせいに決まっているので気にしないことにする。


 か弱い美少女(断言)に向かって、容赦なく襲いかかってくる騎士たち。というか、筋肉の塊たち。


 容赦する必要はなさそうね、第二弾。


 右手の指を握ったり開いたりして準備運動。


「――雷よ、我が敵を討てトニトルス!」


 室内の演習場でありながら。突如として発生した雷は私と団長以外の騎士たちを瞬時に行動不能にしたのだった。



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